円楽が引退を表明した。その2日後には「みのもんたの朝ズバッ!」に出演して心境を語っているのを見た。後輩の歌丸さんは「まだいける。やめないでもらいたい」と引き止めていたけれど、オレはいいんじゃないかと思う。
芸人はサラリーマンと違って定年がないんだから、自分が限界と思ったら引く。その芸風と同じで、さわやかな引き際だった。
最後の演目になった「芝浜」も少し聴かせてもらったが、たしかに本人が「ロレツが回らない」というようにラ行の発音が聞き取りにくかった。円楽といえば、メリハリの効いた声が特徴で講談をやったら似合うんじゃないかと言われたほど。その魅力的な声が思うとおりに出せなくなって、自分でダメ出しをしたんだろう。
すばらしいと思うのは、その姿勢だ。自分に甘くないんだよな。
落語というのは客をどれだけ自分の世界へ引き込めるかが勝負だから、「お客さんと戦っている」という感覚がないといけない。そうじゃないと芸がハネない。いまは客と勝負しない、客に甘えている芸人が多いんだけど、円楽は「客と勝負する」という意識をもっていた。
そういう意識をあの年で持っていたというのが、一流の証なんだと思うよ。