日本人のテレビ好きは外国人には奇異に映るようだ。テレビの番組や登場人物が家庭や学校、職場で話題にならない日はない。こうした日本のテレビ業界の内側に切り込んだ。刺客は民放社員(テレビ君)、新聞記者(プレス君)、広告代理店社員(アドバ君)、家電メーカー社員(エレキ君)の4人である。さあ、お立会い。
広告収入ダウンでテレビ減益
エレキ君
在京キー局5局の06年9月中間決算がまとまった。TBSを除く4社が広告収入減から営業利益が減少。景気拡大が続く中、広告収入が低迷したのはなぜ?
テレビ君
在京キー局5局の売上高、営業利益、スポットCM増減率は下記の表の通り。
売 上 高 | 営 業 利 益 | スポットCM増減率 | |
フジテレビ | 2889(▲2.0) | 241(▲2.0) | (▲5.1%) |
日本テレビ | 1658(▲5.5) | 124(▲5.5) | (▲7.1%) |
TBS | 1551(4.0) | 111(96.0) | (▲0.3%) |
テレビ朝日 | 1247(1.1) | 73(▲17.4) | (▲1.8%) |
テレビ東京 | 617(4.5) | 23(▲37.2) | (▲4.7%) |
アドバ君
各局とも映画制作など映像音楽事業やテレショップといった通信販売事業など経営多角化を進めているが広告収入ダウンをカバーすることはできなかった。広告収入の落ち込みはスポット広告の減少に顕著だ。
エレキ君
スポット広告収入は表のように軒並み前年同期比を下回った。企業イメージアップが狙いのタイム広告は各企業とも業績にかかわらず前年並みの出稿だった。
アドバ君
スポットの落ち込みは①総世帯視聴率(HUT 全世帯のうちテレビを見ていた割合)の低下②主なスポンサーだった消費者金融の広告自粛③テレビ広告費の販売促進費やインターネット広告へのシフト-などが原因。
テレビ君
ネット広告は規模からいってさほどの影響はない。それより、自動車、不動産、流通、酒・飲料など主要広告主がスポットを抑ええているのが大きい。四半期決算になり、広告主企業がコスト管理を厳しくしていることも影響している。
エレキ君
消費者金融のCMは減ったが、逆に目立つのがパチンコメーカーのCM。パチンコ店の近くには消費者金融の店が必ずある。消費者金融は広告を自粛しても売り上げには影響がなさそうだ。
プレス君
このように射幸心を煽って儲けている側面が広告代理店にはある。因果な商売。広告代理店勤務の経験がある作家の車谷長吉は「広告の本質は誘惑と脅しと巧言令色である」と喝破している。
アドバ君
広告収入の落ち込みはテレビ局にとって深刻だ。夏ごろから総世帯視聴率が落ちている。7月のゴールデンタイムでは62%まで下がった。これまで65~70%を保ってきたのが、ここまで下がり、スポンサーが「意外とテレビは見られていない」ことに気がついた。
プレス君
ネットの影響や視聴習慣が深夜・朝型に変わったのが原因。キー局の5社中4社は07年3月期通期決算もスポット広告の減少から営業利益の減少を見込んでいる。許認可行政に守られてきた民放=驕る平家も久しからず。