2025年版 世界31カ国の中堅企業の経営幹部における女性登用率
記事配信日:
2025/03/06 18:00 提供元:共同通信PRワイヤー

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2025年版 世界31カ国の中堅企業の経営幹部における女性登用率
太陽グラントソントンは、グラントソントン加盟主要31カ国に対して実施する世界同時調査の一環として、中堅企業の経営幹部における女性登用率に関する意識調査を実施し、その結果を公表した。(調査期間:2024年10月~12月、調査対象:非上場企業を中心とする世界31カ国の中堅企業経営者)
・世界の中堅企業の経営幹部における女性登用率は34%に上昇、ジェンダーパリティ達成は2051年の予測
・日本の中堅企業の経営幹部における女性の登用状況は、堅実に改善中
・外部を巻き込んだダイバーシティの推進、役員人事の数値目標の設定、女性リーダーの育成基盤 が必要
【表1】中堅企業の経営幹部における女性登用率(%)(過去21年間)
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本年の調査では、全調査対象国の中堅企業平均は、経営幹部の3人に1人以上(34.0%)が女性であった。2024年と比較して、0.5ポイント増加しており、経営幹部における男女平等への進展が、過去5年間の推移よりも上回っていることを示している。(表2)
この進展のおかげで、経営幹部の半数を女性が占めるようになる時点は、 2053 年(前回のグラントソントンの調査結果)から 2051 年に前倒しされる試算となり、これは女性にとっても中堅企業にとっても前向きな一歩であるといえる。しかしながら、平等が実現するまでの道のりはまだまだ長く、継続的な取り組みが求められる。
左【表2】中堅企業の経営幹部における女性登用率(%)
右【表3】中堅企業の経営幹部に女性を登用していない企業の比率(%)
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※ エジプト、ケニア、モロッコは、本年より調査対象国となったため、2024年以前のデータはなし。
調査対象国全体を見渡すと、女性の経営幹部がいない中堅企業はごく少数で、経営幹部に一人も女性を登用していないと答えた中堅企業はわずか4.1%にとどまり、昨年の6.7%から2.6ポイント減少した。(表3)特に、中国、インドネシア、米国では、経営幹部が全員男性の中堅企業はない。これは大きな進歩であるといえる。
経営幹部に占める女性の割合:日本、引き続きワースト1位だが・・・
日本における、経営幹部に占める女性の割合は 18.4%であり、調査対象国平均に遠く及ばず、 不名誉なワースト1位にとどまっている。(表2)しかしながら、 2004年の調査開始から2018年に至るまで、一桁台の比率であったことを考えると、2019年以降の増加は大幅な改善といえる。(表1)また、経営幹部に女性を登用していない企業の比率は年々減少傾向であり、この点においては改善傾向にあるといえる。(表3)
【表4】過去12ヶ月の間に、外部関係者のうち経営幹部の男女バランスや多様性の改善に取り組んでいることを示すよう求めたのは誰か。(複数回答)(%)
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外部からのプレッシャーが企業の意識改革を加速させる
過去12カ月の間で、外部関係者のうち経営幹部の男女バランスや多様性の改善に取り組んでいることを示すよう求めたのは誰かと尋ねたところ、調査対象国全体では、最も頻繁に改善を求めてきたのは「潜在的な新規投資家」(35.2%)、次に「潜在的な方新規顧客」(31.1%)、「既存 投資家」(26.5%)と続く。一方、日本においては、「該当なし」(41.3%)が最も大きく占め、「潜在的な新規顧客」(18.9%)、「潜在的な投資家」(18.2%)、「既存投資家」(16.1%)と続く。日本では、外部からの圧力が全体的にあまり強くないと言える。(表4)
ジェンダー平等推進戦略の内容
ジェンダー平等推進戦略の中で、最も多く挙げられたのは「従業員給与」に関するもので、調査対象国全体では中堅企業の39.3%がこの戦略を策定していた。しかし、日本と調査対象国の平均を比べると、大きな差が見られる項目も見受けられる。
日本は、「役員・パートナーの賞与」「リテンション」「経営幹部ポジション」の3項目で調査対象国の平均を15ポイント以上下回った。さらに、「従業員賞与」「ネットワーキング」「メンタリング」「トレーニング」の4項目でも10~15ポイントの差があった。
この結果から、日本ではこれらの分野でのジェンダー平等推進戦略の取り組みが、他国と比べて遅れていることがうかがえる。(表5)
【表5】ジェンダー平等推進戦略として、どのような内容を策定していますか。(複数回答)(%)
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ジェンダー平等推進戦略が与える影響
ジェンダー平等推進戦略が、どのような影響をもたらしたと考えるか、調査対象国全体として最も多く挙げられたのは、「従業員全体が社内で平等に扱われていると感じる」(31.1%)という企業文化の醸成に役立っているというものだった。しかし、日本は「事業が革新的である」「事業が顧客・パートナー・投資家にとってより魅力的になる」「社内の偏見を克服した」という3項目で、調査対象国の平均より10ポイント以上低い結果となった。
このことから、日本ではダイバーシティの推進が、社内の偏見をなくし、事業の革新につながること、さらには顧客・パートナー・投資家にとっての魅力向上につながることへの意識や理解が、十分に浸透していないことがうかがえる。(表6)
【表6】ジェンダー平等推進戦略は、どのような影響を及ぼしたと思いますか。(複数回答)(%)
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ダイバーシティへの推進力を高めるために
今年の調査結果を受けて、グラントソントンは国際女性デーに「行動を加速する―Accelerate Action-」をテーマに設定し、企業が次世代の人材、投資、顧客、さらには成長の機会を確実に捉えるためには、ダイバーシティ推進に向けた取り組みを着実に進めることが求められている、と発信している。企業の持続的な成長には、多様な視点を取り入れた意思決定が欠かせない。しかし、現在の進展ペースでは、経営層のジェンダーパリティを実現するまでに25年以上かかるとグラントソントンは本調査で予測している。こうした課題に対応し、より多様で持続可能な組織づくりを進めるために、次の3つの視点を提案している。
1 サプライチェーン全体でのダイバーシティ推進の働きかけ
取引先や投資先、提携企業などにもダイバーシティ推進を促すことで、より広範な変革が期待できる。企業同士が連携することで、相互の意識改革が進み、変化が加速すると考えられる。
2 影響力のある役員人事における目標設定
取締役会などのガバナンス層において、多様性を意識した人材登用を進めるため、具体的な目標を設定することが有効。企業の未来を見据えたリーダーシップのあり方を再構築することで、持続的な成長につなげることができる。
3 女性リーダー育成のための環境整備
ネットワーキング、メンタリング、研修の機会を充実させ、キャリアのあらゆる段階で女性が成長できる仕組みを整えることが重要である。経営層への登用だけでなく、長期的に活躍できる環境をつくることで、企業全体の発展にも寄与する。
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矢島洋子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
チーフ・ダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー(CDIO) 主席研究員
2025年の調査においても、日本は「経営幹部における女性登用率」「経営幹部に女性を登用していない企業の比率」の両指標で、31か国中最下位となっている。女性登用率については、31か国中28か国が30%以上に到達しており、40%以上の国も5か国ある。一方、10%台の国は日本のみである。
日本で女性活躍推進法が施行された2016年からの女性登用率の推移(表1)をみると、日本の女性登用率も上昇はしているものの、他の国の10年前の水準にも追いつかない状況である。女性活躍推進法では、企業に自主行動計画の策定や目標設定を求めている。施行当初は301人以上の企業が対象であり、2022年からは101人以上の企業が対象となった。こうしたポジティブ・アクションは、効果を上げなかったのであろうか。
女性活躍推進法の効果
厚生労働省「雇用均等基本調査」で、「課長相当職に占める女性割合」の企業規模別の推移をみると、女性活躍推進法の成立した2015年度から直近の2023年度までの8年間で、どの規模の企業も一定程度、女性比率は上昇している。特に、「100~299人」「5000人以上」の規模の上昇ポイントが大きい。2015年から、さらに9年遡った2006年のデータをみると、この頃は「規模の小さな企業ほど課長相当職に占める女性割合が高い」という傾向にあったことがわかる。中小企業では、女性活躍推進は難しいと思われているが、かつては、中小企業の方が、女性の正社員比率も高く、管理職比率も高い状況があった。大企業では、両立支援などの制度は充実しているが、長時間で画一的な働き方と単線型キャリアを背景として、
表7 【日本】規模別 課長相当職に占める女性割合の推移
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503065313-O13-9Wv9L38P】 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503065313-O14-pG957oiO】
出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」より作成。
結婚・出産時の離職率が高かった。一方、中小企業では、制度は整っていなくても、従業員のニーズに応じた柔軟な働き方を提供することが可能だったことなどから、就業継続が大企業と比べればしやすかった。あくまで平均の話であり、中小企業間の差が大きい状況は今も昔も変わっていない。
2006年から2015年の変化をみると、「30~99人」と「5000人以上」で女性割合が高まり、グラフは両端が上がる形となっている。この間、「100~299人」「300~999人」という、グラントソントンの国際調査の対象となる「中堅企業」の女性割合の伸びが小さい。2006年から2015年の変化と、2015年から2023年の変化を比較すると、従業員100人以上のいずれの企業規模でも、2015年から2023年の方が増加ポイントは大きくなっている。さらには、企業規模が大きなほど、増加ポイントが大きくなっている。女性活躍推進法によってわずかではあるが、変化が加速されたという効果はあるようだ。だが、その直近の2023年度調査で「300~999人」の中堅企業は、もっとも女性割合が低くなっており、当初から女性活躍推進法の対象となっていながら、この規模での変化が鈍いことは大きな課題といえよう。
ちなみに、なぜ、2015年から8年ではなく9年遡ってみているかと言えば、「雇用均等基本調査」の2007年度報告では、この指標データが採れないためである。また、なぜ「課長相当職以上」ではなく「課長相当職」でみているかといえば、2015年度、2023年度調査には、「課長相当職以上」というデータがあるが、2006年度には「係長相当職以上」しかないためである。それほど、当時は、課長相当職女性がいなかったということであろう。このように、日本では統計データの整備も遅れており、20年正確に遡って推移を確認することも難しい状況があり、こうしたことも女性活躍の「見える化」の課題であろう。
表8 【日本】規模別 役員に占める女性割合の推移【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503065313-O15-abWXU89b】
出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」より作成。
次に、同調査で役員に占める女性割合をみると、こちらも、2006年時点では、企業規模が小さいほど割合が高い、という傾向にあった。しかし、その後、2015年では、「5,000人以上」のポイントが大きく上昇し、さらに2023年には、「1,000~4,999人」と「5,000人以上」のポイントが上昇した。大企業に対しては、女性活躍推進法を通じた計画や目標設定が一定の効果を上げた可能性がある。一方で、1,000人未満のいずれの規模でも、2015年から2023年にかけて女性割合が減少した。役員に関しては、2023年10月に東京証券取引所がプライム市場の上場規程の改定を行い、「2030年までに女性役員の比率を30%とする」などの基準を導入したことから、大企業を中心に、今後さらに役員比率が高まり、企業規模間での差が開いていき、中堅企業の停滞感が明確になることが懸念される。
外部からのプレッシャーを力にできるか
グラントソントンの今年度調査では、顧客や投資家などの外部からのプレッシャーがダイバーシティの推進に貢献しており、今後もこうした動きが加速することが期待されている。日本の中堅企業では、これまでそうしたプレッシャーを感じていないという企業が多いが、今後は、業界内やサプライチェーンとの関係性で動いていく可能性が高まると予想される。日本では、2024年度の法改正でカスタマーハラスメント対策が企業の雇用管理上の措置義務として課されることとなった。他国でみられるようなポジティブな影響ではないが、個別企業内の取組みだけでなく、取引先や業界内で、ネガティブな影響を排していくことが求められるようになる。マイナスからのスタートにはなるが、こうした企業間の関係性を無視できないという考え方をベースとして、前向きなダイバーシティの推進についても、外部からの影響を意識しての加速化が期待される。
また、男女の賃金差異への着目も、本レポートで指摘されているが、日本においても、2022年から改正女性活躍推進法により賃金差異の分析・公表が求められるようになった。まだ、賃金差異に着目することの意義や有効な分析手法などが周知されているとは言い難いが、賃金差異は、管理職比率や就業継続年数以外の課題も浮かび上がらせることができる指標であることから、これを活用して、日本におけるダイバーシティ、女性活躍も加速化することが期待される。
以上
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2025年版 世界31カ国の中堅企業の経営幹部における女性の登用率- 調査概要
調査実施期間: 2024年10月~12月
参加国数: 31カ国
(アジア太平洋地域) 日本、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、 フィリピン、韓国、ベトナム
(EU加盟国) フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、スペイン、スウェーデン
(北米・南米) 米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ
(アフリカ) 南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、ケニア、モロッコ
(その他)英国、トルコ、アラブ首長国連邦
調査対象: 世界31カ国3,748社の中堅企業ビジネスリーダーまたは経営トップ
日本からは従業員数100名以上1,000名未満の全国の中堅・中小企業から143社の意志決定権を持つ経営層が回答した。
調査方法:質問票を各言語に翻訳し、オンラインおよび電話で聞き取り調査を行い、調査会社Dynataがデータの取りまとめを行った。
利用上の注意: 統計の数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。表2および表3内の比率(%)が同じ国は、小数点第二位以下の数値で順位付けしている。
本文書の経営幹部には、次の役職を含む:
最高経営責任者(CEO)/常務取締役、最高執行責任者 (COO)、グループ法務顧問/グループ会社総務、最高財務責任者 (CFO)、最高情報責任者 (CIO)、最高技術責任者 (CTO)、人事部長、最高マーケティング責任者 (CMO)、最高サステナビリティ責任者、最高商務責任者、最高コミュニケーション責任者/コーポレートアフェアーズ責任者、議長、パートナー、共同出資者、共同経営者 等。
太陽グラントソントン
所在地: 東京都港区元赤坂1-2-7 赤坂Kタワー18F
代 表: 梶川 融
グループ会社: 太陽有限責任監査法人、太陽グラントソントン税理士法人、太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社、太陽グラントソントン株式会社、太陽グラントソントン社会保険労務士法人、太陽グラントソントン・アカウンティングサービス株式会社、株式会社サンライズ・アカウンティング・インターナショナル
U R L : https://www.grantthornton.jp/
<太陽グラントソントンが提供する事業領域>
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<Grant Thornton>
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