そっと覗いて観ていたら新事実が判明! 野生のメダカは夜明けではなく深夜に産卵を開始する

そっと覗いて観ていたら新事実が判明!2025年2月13日
大阪公立大学
岐阜大学

そっと覗いて観ていたら新事実が判明! 野生のメダカは夜明けではなく深夜に産卵を開始する

ポイント
◇ 従来、メダカは日の出の前後1時間に産卵を開始すると考えられていたが、野生のメダカの産卵は午前0時頃から確認できた。
◇ メダカの活動量は午前0時以降に増加しはじめ、午前1時~午前3時に多くなった。
◇ オスの求愛行動は午前0時以降に顕著に増加し、特に午前2時~午前3時に多くなった。

概要
 ミナミメダカ(以下、メダカ)は、これまで実験室での研究から日の出の前後1時間に産卵を開始すると考えられてきましたが、自然環境での繁殖行動については十分に調べられていませんでした。
 
  大阪公立大学大学院理学研究科の近藤 湧生特任助教、岡本 鼓都里氏(当時、理学部4年)、北向 祐人(博士前期課程1年)、安房田 智司教授、岐阜大学教育学部の古屋 康則教授らの研究チームは、2023年7月~8月に岐阜県岐阜市の川において、午後9時~翌朝午前5時までのメダカの様子を水面上からビデオカメラで撮影し、その行動を分析しました。その結果、産卵は午前0時頃から行われることが分かりました。また、メダカの活動量は午前0時以降に増加しはじめ、午前1時~午前3時に多くなることが分かりました。さらに、オスの求愛行動は午前0時以降に顕著に増加し、特に午前2時~午前3時に多くなることが明らかになりました。本研究結果により、自然環境のメダカの産卵開始時刻は、従来考えられていたよりも早い時間帯であることが分かりました。
 本研究成果は、2025年2月13日(日本時間)に国際学術誌「PLOS ONE」に掲載されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502063904-O10-YMWR5ZZE
近藤 湧生特任助教のコメント
 童謡「メダカの学校」でも謡われるほど有名なメダカですが、実は野生での生活については驚くほど分かっていません。今回、私たちは彼らの生活を明らかにするため、川にいるメダカの様子をそ~っと覗いて観察しました。引き続き野外調査を継続することで、自然環境におけるメダカの生活をより詳しく解明していきたいと考えています。

研究の背景
 モデル生物は飼育しやすく、繁殖能力が高く、短期間で成長するなどの特徴があり、その研究の多くは、温度や日照時間などを自由に調整できる実験室で行われます。しかし、人工的な環境と自然環境は大きく異なるため、生き物本来の姿を見逃している可能性があります。最近の研究において、「実験室で見られた行動」と「自然の中での行動」が異なっていたという例が、マウスやゼブラフィッシュなどのモデル生物で見つかっています。そのため、実験室と自然環境の違いが生き物にどのような影響を与えているのかを調べることは、その生き物の本来の姿を知るために重要です。
 私たちの身近な魚であるメダカもモデル生物として、遺伝学や発生学、行動学、医学などの分野で活躍しています。実験室での研究から、メダカは日の出の前後1時間に産卵を開始すると考えられてきました。しかし、自然環境におけるメダカの繁殖行動の研究はこれまでに1例のみであり、その研究においても日の出以降の観察しか実施されていなかったため、産卵開始時刻や繁殖に伴う夜間の行動に関する情報が不足していました。

研究の内容
 本研究では、岐阜県岐阜市の川で2023年7月~8月に、午後9時~翌朝午前5時までのメダカの行動を水面上からビデオカメラで赤色光ライトを使用して撮影しました。
 まず、撮影した映像を分析し、産卵開始時刻の特定を行いました。メスは産卵後の数時間、お腹に数個〜20個程度の卵をぶら下げて泳ぎます。3日間分の動画において、お腹に卵をぶら下げたメスが午前0時頃から見られたことにより、深夜に産卵が開始することが分かりました。撮影期間中の日の出時刻は午前5時頃であったため、従来考えられていたよりもはるかに早い時間帯に産卵が始まることが分かりました。
 次に、夜間の活動パターンの解析を行いました。午後9時~午後11時までは活動量が少なく、多くの個体が休息していると考えられました。活発な行動の指標である「1個体で遊泳」の頻度は、午前0時以降に増加し、午前1時~午前3時に高くなりました(図2a)。対して、ほとんど動かない状態である「定位行動」の頻度は、午後9時~午後10時が最も高いことが分かりました(図2b)。また、オスの求愛行動である、メスを追いかける「したがい」と、メスの前で素早く回転する「求愛円舞」については、午前0時以降に顕著に増加し、特に午前2時~午前3時に多いことが明らかになりました(図2c、d)。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502063904-O7-bmVoiOzO
図2 (a、b)メダカの活動量の指標。午前0時頃まで活動量は少なかったが、それ以降活動量が増加した。(c、d)メダカの求愛行動量の指標。メダカは午前0時頃から求愛行動の頻度が増加した。

期待される効果・今後の展開
 今回の調査により、野生のメダカが深夜から活発な求愛行動を示し、産卵を開始することが明らかになりました。しかし、まだ短期的で局所的なデータのため、今後は24時間の観察や繁殖期全体を通した長期調査、他地域での調査、また研究室内での観察との比較を通して、野生のメダカの産卵開始時刻と活動量の変化をより詳細に解明したいと考えています。また、夜間撮影に使用した赤色光ライトのメダカへの影響も評価していく必要があります。
 さらに、実験室での観察だけでは生き物の本当の姿を見落としてしまうかもしれないということが分かりました。生き物についての理解を深めるだけでなく、モデル生物としてのメダカのさらに適切な取り扱い方法の確立に貢献できると考えます。本研究は実験室での研究と野外での観察を組み合わせることの意義を示す好例となり、他のモデル生物研究においても自然環境での生態解明の重要性に大きな示唆を与えるものと期待できます。

資金情報
本研究は、科研費 研究活動スタート支援22K20666、科研費 学術変革領域研究(B)23H03868、東京動物園協会 野生生物保全基金、笹川科学研究助成(2023-5013、2024-5010)の援助を受けたものです。

掲載誌情報
【発表雑誌】PLOS ONE
【論文名】Medaka (Oryzias latipes) initiate courtship and spawning late at night: Insights from field observations
【著  者】Yuki Kondo, Kotori Okamoto, Yuto Kitamukai, Yasunori Koya, Satoshi Awata
【掲載URL】https://doi.org/10.1371/journal.pone.0318358

配信会社から提供を受けたコンテンツやプレスリリースを原文のまま掲載しており、J-CASTトレンドが制作した記事ではありません。お問い合わせは配信会社・プレスリリースの配信元にお願いいたします。
共同通信PRワイヤー