医者志望の女子が増えている 昨年度は医学科入学者が初の「4割超」
医者の世界で、女性の進出が目立っている。医学部医学科に入学した女性の割合は昨春、初めて4割を超えた。先進国の中では、女性医師比率が極めて低かったが日本だが、大きく様変わりしつつある。
「入試不正」で拍車
文部科学省によると、2023年度に国公私立大学の医学科に入学したのは、9198人。そのうち、女性は40.2%を占めた。4割を超えるのは初めてだ。
朝日新聞によると、医学科入学者の女性割合は、1970年代の10%台前半から徐々に上昇し、94年度に初めて30%を超えた。しかし、それから約25年間、30%台前半の状況が続いていた。
女性比率を引き上げるきっかけになったのは2018年、東京医科大など一部の大学で発覚した入試不正事件だ。女性の合格者を減らすため、入試の得点操作が行われていたことが明らかになった。その結果、全国的に入試の選抜方法が改善され、女性の割合が大きく伸びることになった。
昨年度は、国立では滋賀医科大など5大学、私立では順天堂大や聖マリアンナ医科大など共学の6大学で、入学者の女性割合が5割を超えたという。
合格者の割合が女子だけ低い
医療サイト「時事メディカル」によると、入試に不正があるのではないかということは、発覚以前から、女性ライフクリニック(東京)理事長の対馬ルリ子医師らが立ち上げた「日本女性医療者連合」(以下JAMP)が独自に調査を進めていた。
時事メディカルの取材に、対馬氏は
「(以前から)研修医や若い女性医師の間では、女子は男子よりも医学部合格のボーダーラインが高いという共通認識がありました。女性は出産や育児で辞めていくから入りづらいのは仕方がないと、差別を『必要悪』と思い込まされているようでした。私たちはこれを絶対に見過ごすわけにはいかないと思い、社会学者の上野千鶴子さんに教えを請いながらデータを精査したところ、医学部は他学部との比較でも受験者に対する合格者の割合が女子だけ低いという事実が浮かび上がったのです」
と、調査結果を振り返っている。
患者にとってもプラス
内閣府男女共同参画局の「女性医師の占める割合」(国際比較)によると、2016年段階の日本の女性医師比率は21.1%。韓国(22.3%)と同レベルだった。米(34.6%)、仏(44.3%)、英(45.9%)、OECD平均(46.5%)などに比べると、大きく劣る。フィンランドは57%台と、女性のほうが多い。
女性医師の増加は、患者にとってプラスになるということも指摘されている。共同通信は4月23日、女性患者は、女性医師に治療された方がメリットが大きいことが調査で明らかになったと報じている。東京大などのチームによる米国での調査によると、男性医師の場合より死亡率や再入院率が低かった。女性医師が増えれば、女性患者の治療経過の改善につながる可能性があるとしている。
また、神戸新聞によると、兵庫県加古川市立中学校の内科の定期健康診断は、2024年度から同性の医師が担当することになった。女子生徒は女性医師が、男子生徒は男性医師が診察する。全中学生を対象にしたアンケートで、女子生徒の大半が希望したことによるという。女性医師が増えれば、各地で同じような動きが広まる可能性がありそうだ。
J-CASTトレンド」では関連して、「『リケジョ』増やそう! 東工大、京大などに続々『女子枠』」、「『大卒看護師』医療現場で存在感増す 国家試験合格者の中で4割超」なども紹介している。