ヨーグルト食べて下痢が悪化...腸活したのになぜ 知っておきたい「FODMAP」
【連載】お腹トラブル天国と地獄 ~運命の選択~
30代・女性の玲奈さんは、体質改善のために腸内環境を整えることにしました。普段の生活習慣を見直して、メディアで紹介されている手法をたくさん取り入れることに。ですが腸活に取り組み始めてから、なぜか下痢が止まらなくなり、大ピンチ!
健康のためにやっているつもりだったのに、一体なぜ?
腸活したら下痢が止まらない
玲奈さんは、小学生の頃から下痢体質。月曜日の朝や大切な試験の前になると、必ずお腹を下すのが悩みでした。大人になった今でも、会議の前にはお腹を下しがち。
ある日、雑誌で「下痢体質を治すためには腸内環境を整えることが大切」という特集を読んだ玲奈さんは、さっそく日々の中に腸活を取り入れてみることに。食事、睡眠、運動の習慣を中心に、生活全体を見直します。ヨーグルトを食べるようにする、1日1万歩以上歩く、水分を積極的に飲む、日付が変わる前に布団に入って眠るなど、できることは全て行いました。
この生活を始めて数日――健康的な腸内環境に生まれ変わるつもりが、なぜか毎日のように下痢が続くようになってしまいました。
「あまりにも生活が変わりすぎて体がびっくりしてしまったのか、でもそのうち慣れるはず!」
と思い、これまで通りの生活を続けることに。しかし、2週間経っても症状は改善しませんでした。仕方がないので玲奈さんは腸活をストップ。すると、途端に下痢が止まったのです!
体質改善のために腸活を取り入れたのに、症状がかえって悪化した玲奈さん。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。そこには、あまり知られていない「落とし穴」が潜んでいました。次のうち、どちらが原因だったと考えられるでしょうか。
いいと思ったものが合わないことも
実は、「ヨーグルトを食べる」が正解。腸活と聞いて、誰もが1度は手に取るであろうヨーグルトは、人によっては下痢に悩まされることがあります。ヨーグルトだけでなく、「腸内環境を整える効果が期待できる食品」によって、逆にお腹トラブルを引き起こしてしまうケースがあるのです。
玲奈さんのように、特定のタイミングで下痢をしてしまうのは、過敏性腸症候群(IBS)の典型的な症状のひとつです。過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛、便秘、下痢が繰り返される消化器の病気で、10人に1人が罹患していると言われている有病率の高い疾患です。特定の食品が原因となって発症することがあり、それらの症状を引き起こしやすい食品を、頭文字をとって「FODMAP」と呼びます。
ヨーグルトは、FODMAPに含まれる食品のひとつ。おそらく玲奈さんは、腸活を始めるにあたってヨーグルトを積極的に食べるようになったことで症状が悪化してしまったと考えられます。ただ、過敏性腸症候群(IBS)だったとしても、全てのFODMAPに反応して症状が出るわけではありません。合うか合わないかは、その人次第です。現代の研究成果や医学では、事前に自分に合う・合わないを見極めることは難しく、自身で探していくしかありません。
なお、「1日1万歩以上歩く」のは、腸活以外の観点からみても嬉しい効果が期待できます。運動習慣としてぜひ取り入れてみましょう。ただし、大切なのは「1万歩」という歩数ではありません。一定距離を歩くのが大切なので、歩数にこだわらずに散歩に出かけるだけで十分です。
自分を観察してうまく付き合う
FODMAPについて、もう少しだけ見ていきましょう。
小腸で消化吸収されず、大腸での発酵性がある糖質の総称です。それぞれの頭文字をとってFODMAPと呼ばれています。
F=Fermentable:発酵性の
O=Oligosaccharides:オリゴ糖
D=Disaccharides:二糖類
M=Monosaccharides:単糖類
A=And
P=Polyols:糖アルコール
体内での吸収効率が悪い食品のため、人によっては腸の動きを過剰に促進したり、抑制したりといった影響を与え、下痢や便秘を誘発してしまいます。とはいえ前述の通り、全ての食品が不調を引き起こすわけではありません。何がだめで何が大丈夫なのかは、意識的に自分の状態を観察しながら見極めていきましょう。
〇著者プロフィール
長瀬みなみ
腸活プロデューサー/日本発酵文化協会上級認定講師
東京生まれ、便秘育ち。長年の慢性便秘を高く評価され、腸活サポートアプリ運営会社にて広報PR部門の立ち上げ、ブランド責任者として取締役CBOに就任。自身もさまざまな腸活を取り入れ、入社後に独学と自らの人体実験で長年の便秘を解消することに成功する。
2023年より独立。現在は腸活と発酵のチカラでよりハッピーな人生を増やしていくため、セミナー講師やコラム執筆、コラボ商品のプロデュースなど幅広く活動している。