新型コロナが終わらない 「第二のインフル」になるのか?
新型コロナウイルスの感染が始まってから5年目を迎えている。いまだに次々と新たな変異株が登場し、感染拡大が周期的に繰り返されている。専門家の中には、コロナは「第二のインフルエンザ」になるのでは、と予想する人もいる。流行の兆しが見えるたびに、ワクチンを打って防御することになりそうだという。
能登では感染の死者も
厚生労働省によると、全国約5000の定点医療機関から2024年1月14日までの1週間に報告された新型コロナウイルス感染者は、1医療機関当たり8.96人。前週の6.96人から約1.29倍。8週連続で増加した。都道府県別では、岐阜14.29人、茨城14.21人、愛知14.17人などが特に多い。能登の地震被災地では、一部の避難所でコロナ感染が広がり、死者も報じられている。
新型コロナウイルスは2019年12月ごろ、中国・武漢で見つかり、23年5月までに世界で約7億6500万人が感染、約690万人が亡くなった。致死率は1%近い。
ワクチンや治療薬が開発されたことや、感染者の増加で社会全体の集団免疫力も高まってきたことなどから、WHOは23年5月、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を発表。日本政府も同月、感染法上の位置づけを、結核などと同じ「2類」相当から、インフルエンザ並みの「5類」に格下げした。
しかし、昨年夏も、世界的には流行が収まらず、日本でも多くの人が亡くなった。国内の感染者は、昨年10月ごろにはいったん沈静化したものの,11月後半から再び増え始めた。
ウイルスが変化
コロナは、感染が始まった当初から、「いつ終息するのか」ということが話題になっていた。同じような感染症で、約100年前に大流行し、世界全体で数千万人が亡くなったとされる「スペイン風邪」は、3年ほどでほぼ終息したからだ。
しかし、コロナはなかなか終息の兆しが見えない。大きな理由の一つに、「ウイルスの変異」があるとされている。これまでも「アルファ株」「ベータ株」「デルタ株」など、次々に変異株が登場し、新たな感染拡大を引き起こしてきた。特に2021年末に登場した「オミクロン株」は、免疫をすり抜ける力が強く、さらにそのオミクロン株からまた新たな派生型が登場することが繰り返されている。
ワクチンが開発され、接種が広がったことで、感染予防や重症化の歯止めになっているとされているが、次々と新たな変異株が現れるため、完全な予防や対応が難しい一面もある。
すでに終息?
では、新型コロナはいつになったら終息するのだろうか。東洋経済ONLINEは早々と20年5月、ニューヨークタイムズの「歴史が示唆する新型コロナの意外『終わり方』」という記事を紹介している。
それによると、パンデミックの終わり方には2通りあるという。1つは医学的な終息で、罹患率と死亡率が大きく減少して終わる。もう1つは社会的な終息で、病気に対する恐怖心が薄れてきて終わる。
「『いつ終わるんだろう』と人々が言う場合、それは社会的な終息を指している」と、ジョンズ・ホプキンス大学の医学史学者、ジェレミー・グリーン氏は語っている。つまり、病気を抑え込むことによって終わりが訪れるのではなく、人々がパニック状態に疲れて、病気とともに生きるようになることによっても、パンデミックは終わる、とグリーン氏は説明している。
WHOが「緊急事態」を終了し、日本でもインフルエンザと同じ「5類」になっている現状は、いわばすでに社会的には「終息」しているとの見方もできそうだ。
流行はまだまだ続く
とはいっても、感染が再拡大するたびに、多くの人は心配になる。日本ではこれまでの9波にわたる流行で約10万人が亡くなったと推計されている。「5類」移行後の「第9波」でも、1万人以上が亡くなった模様だ。
感染症に詳しい濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授は、新型コロナウイルスについて24年1月15日のNHKの番組で、
「免疫がついたかと思うと、その免疫をかいくぐる新しい変異ウイルスの派生型が出てきている状況で、流行はまだまだ年単位で続くと考えたほうがいいと思う。新型コロナは、インフルエンザと同じように次の冬に流行する株をある程度予測して、秋にワクチンを接種していく状況になると考えられる。第2のインフルエンザのような存在として、地球上に残るのではないか」
と話している。
長年、牛の感染症として恐れられた「牛疫」について、歴史的・国際的視野で研究した『牛疫』(アマンダ・ケイ・マクヴェティ著、みすず書房)などによると、今のところ人類が根絶に成功した感染症は、牛疫と天然痘だけだという。新型コロナとの闘いは、まだまだ続くことになりそうだ。