「能登半島地震」半年前に指摘されていた危うさ 地元テレビで識者が注意喚起した内容

   出身者の帰省により、1年で最も「人口」が多くなる元日を狙い撃ちしたような能登半島地震。親族10人が集まっていた家が土砂に埋もれたケースもあったと報じられている。あまりにも唐突に起きた悲劇だ。

   しかし石川県内に住む人によると「ここ数年、大きな地震が続いていたし、今後も起きる可能性があると言われてはいた」という話も。だとすれば、もっと被害を少なくする方法があったのではないだろうか。

能登地方で震度7の大地震 石川県内灘町(写真:ロイター/アフロ)
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能登では近年何度も大きな地震

   石川県羽咋市出身のTさん(50代女性)は、同郷の50代夫と3人の子どもと東京都内で暮らしている。年末年始は例年ふるさとに帰省するが、今年は子どもが相次いでインフルエンザにかかり、急きょ取りやめていた。

   地震発生後に夫婦の実家に電話をかけたところ、それぞれの家は激しく揺れたが、幸いけが人や家財の大きな被害は出なかったという。しかしTさんの母親からは、意外なことを聞いた。

「北陸以外の人が知らないかもしれませんが、ここ数年、能登地方を震源とする大きな地震が何度もあったんです。私はそろそろ収まったのかなと思っていたのですが、母は『県内では、これからもっと大きな地震が来るかもしれないと言われていたよ』というのでびっくりして」

   能登地方を震源とする地震は2020年末から続いており、22年6月には震度6弱、23年5月には6強の地震が起きている。

   一般的な地震発生のメカニズムはプレートにひずみがたまり、それが限界に達すると亀裂が入ったり大きく動いたりする。一度ひずみが解消されると、しばらくは大きな地震が起きないケースが多い。

   しかし能登半島で起きている地震は、これとはメカニズムが異なり、群発地震はまだ続く――。県内のニュースでは、そう指摘されていたというのだ。

「地震の後に母と電話したときに初めて聞いて、なぜそのニュースが東京で流れてないんだろうと怖くなりました。もしもそんなことが言われていたなら、帰省をやめた人だっていたんじゃないかなって。母にも『そんな大事なこと、ちゃんと教えといてよね』と言ってしまいました」

「予知」や「警告」は難しいのか

   石川県内ではどんなニュースが流れていたのか。YouTubeを検索すると、石川テレビが2023年6月12日に放送した番組「石川さんnewsイット!」の内容をアップロードした動画が見つかった。

   「石川・奥能登群発地震の原因は"東京ドーム約23杯分"の流体と判明 震源は海側に移動」と題するこの動画によると、ここ数年の群発地震は「珠洲市の地下16キロに上昇してきた東京ドーム約23杯分の流体が原因で起こっている」と金沢大学などの合同研究グループが発表したとしている。

   番組では金沢大学の平松良浩教授が、次のような説明をしている。

「(能登半島沖の)海底活断層全体が動くと、マグニチュード7クラスの地震が起こる可能性がありまして、そうすると震度6強以上の、さらに強い揺れになるということも考えられるんです。そういう点では、まだしばらくはより大きな地震、あるいは強い揺れというものにも、やはり一定の注意は必要だと考えています」

   Tさんの母が見た番組がこれかどうかは確認できなかったが、「これからもっと大きな地震が来るかもしれないと言われていたよ」という言葉とは一致する。

   しかし地震学者がここまで可能性を指摘しながら、なぜ「予知」や「警告」にはつながらなかったのだろうか。Tさんは、マスコミが危機感をもって強めに報じて欲しいと希望しつつ、実際には難しいのかもしれないという。

「一定の注意は必要、なんて言われたって、誰も備えなんてしないと思いますけど、だからといって『いつ、どんな大きさの地震が来る』までは言えないんでしょうね。帰省や旅行の取りやめ、他の地域への移住を呼びかけるとしても、国や自治体が補償を求められかねないですし。やっぱり自分で情報収集し、自己責任で判断するしかないのかも」

東日本大震災も1年以上前に「予想」されていた

   地震研究と予知の問題は、東日本大震災のときにも指摘されていた。NHKが2010年1月10日に放送した番組「MEGAQUAKE 巨大地震」では、東北大学災害制御研究センター(当時)の今村文彦教授がこんなコメントを残している。

「巨大地震というよりも超巨大地震が、実はもういつ起きてもおかしくない状況である」

   その約1年後の2011年3月11日、「予想」は的中して東日本大震災が発生している。後のシリーズ番組では、2日前の地震が前触れになった可能性を感じながら「事前の警告」につなげられなかったことを悔やみ、研究を続ける人が登場している。

   現在、内閣府の防災情報のサイトには「南海トラフ巨大地震」と「首都直下地震」「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」の3つの地震の被害と対策に関する資料が掲載されている。

   これらの地震は、30年以内に60?70パーセントの確率で起こると予測されているが、発生時期が絞り込まれていないため、まだ「予知」や「警告」にはつながっていない。過去の大地震のように「いつ来てもおかしくないと言われていた」で終わらせないためには、どうしたらよいのだろうか。

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