多子家庭は「大学無償」になる? 世論調査は「評価しない」が多数

   3人以上の子どもがいる場合、大学などの授業料が無償になる――政府が「子育て支援策」の一つとして、そんな方針を打ち出した。しかし、世論調査では賛成の意見が少ないようだ。自民党内にも異論があるという。

多子家庭は「大学無償」、世間の反応は
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25年度から実施

   この方針は2023年12月11日、政府が「こども未来戦略」案の一つとして公表した。25年度から開始するという。

   朝日新聞によると、対象となるのは、扶養する子どもが3人以上いる世帯の子で、所得制限はない。例えば3人きょうだいで、第1子と第2子が大学に在籍していれば、2人とも対象となる。ただ、第1子が卒業後に扶養を外れると、扶養する子どもが2人となるため、第2子と第3子は対象外となる。

   大学の場合、この制度では授業料免除の上限は、国公立が標準額となる約54万円、私立は約70万円。短大や高専や専門学校なども対象になる。ただし、定員割れが続いているような学校は、無償化の対象からは除外される可能性があるという。

「評価する」は約2割

   毎日新聞は12月16、17の両日に全国世論調査を実施。扶養する子どもが3人以上いる世帯を対象に大学の授業料などを無償化する政府の方針について、少子化対策として評価するかを尋ねた。結果は、「評価しない」が68%で「評価する」(23%)を大きく上回った。「わからない」は9%だった。

   自民党は15日、「『こども・若者』輝く未来創造本部」などの合同会議を開いた。読売新聞によると、政府の「こども未来戦略案」を了承したものの、会議では、戦略案の柱である多子世帯の大学授業料無償化を巡って政府を批判する意見が相次いだ。

   会議では、出席者から「唐突で分かりにくく、教育政策の全体像が見えない」との意見が出た。党内では、就職などで扶養対象の子どもが2人以下になると対象外になることから「国民をだますことになる」との批判もある、と同紙は補足している。

文教予算は減り続けた

   日本の大学の授業料は、この50年余りで暴騰した。国立大の場合、1970年ごろは年間1万2000円だったが、今や50倍近くに跳ね上がった。

   経済評論家の加谷珪一さんの著書『貧乏国ニッポン――ますます転落する国でどう生きるか』(幻冬舎新書)によると、教育に対する公的支出のGDP比率は、日本は主要43国の中で40位。日本の大学における学生1人当たりの教育費は米国の3分の2にとどまる。一般会計における文教費の割合は、1960年代は12%近くあったが、近年は4%近くに低下しているとのことだ。

   先進国では、大学の授業料が格安の国も多い。ベネッセの「海外大学進学情報」によると、欧州では、「ノーベル賞受賞者を数多く輩出するようなレベルの高い教育を行っている大学でも、実は学費が無料、または安価」というところが多いという。

   ドイツでは「公立大学の学士課程・修士課程は、EU圏内・圏外などの国籍に関わらず、一部の例外を除き原則としてすべての授業料が無料」。ノルウェーも、公立大学の授業料は、学習・研究レベルや国籍に関係なく、すべての学生が無料だという。

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