「金ばっかかけて、親孝行できなくてゴメン」 創作にまつわる懺悔、聞き届けます

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   年内最終回となった2023年12月20日は、特別編。一年の総決算として「創作にまつわる懺悔したい話」をJ-CASTトレンドのXアカウント「質問箱」で募集し、山下さんが「懺悔聞き届け人」として匿名で読み上げる「作リエ懺悔室」を実施した。

   ジェイ・キャストの常設メタバース空間「バーチャ場」で行い、YouTube配信したイベントの模様をアーカイブでお届けする。山下さんが最も「この人は確かに懺悔をしなければならないな、来年も頑張って」と感じる懺悔に贈られる「山下賞」に選ばれたのは、ある一人のクリエイターが、親へと向けた切なる思いだった。

第一回「作リエ懺悔室」
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「バックアップのバックアップ」が必要?

   懺悔の例としては、下記の通り。山下さん曰く、「某映像クリエイター」が送ってくれた話だという。


    懺悔を読み終えたら、山下さんは「許しを得られるかどうか、神さまにお伺いを立てる」。はたしてその結果は......といった流れで進行する。

   今回寄せられた懺悔は四つ。順に見ていこう。美術大学に通う学生や、制作会社で働いていると思しきクリエイターらから、多様な告白があった(カッコ内はYouTubeでの再生時間)。

■第一の懺悔(7:05~)
はじめまして、美大生です。近々卒業制作展があります。
先日、その為の卒制の直前審査で「4年間の集大成としては精度が低いし作り込みも簡単に見える」などと厳しめの評価を頂きました。
私はその日まで、教授とのコミュニケーションを避けてただ1人で黙々と制作を続けてきました。
その後、私がもっと積極的に教授と作品の相談等をしていれば今より
マシな作品になっていたのかも...... 後悔しても時間は戻ってきません(; ;
卒展本番まで残り1ヶ月です。この後色んな教授達にお話をして、足掻く予定です............
神様、どうか何とかなりますように............
■第二の懺悔(14:35~)
神父様、お聞きください。友人の誕生日を祝うために、動画を作っていた時のことです。
データの損失を防ぐために、アプリ内と端末とで二重に保存される仕様のものを使っているのですが、2回保存される分、容量がかなり圧迫されていました。そこで私は思いつきました。
「そうだ、アプリ内にあるデータを一旦消そう」
そうして私は、データのバックアップを取り、なんの躊躇いもなくアプリを消しました。
数日後、入れ直して編集の続きをやろうとすると、アップデートが入っていました。
リリース当初から変更がなかったデータのバックアップに関する仕様が大幅に変わっており、私のバックアップデータは非対応になっていました......

   第一の懺悔については、山下さんが聞き届ける前から「己の非を認め、行動を改める」覚悟を決めていること、第二の懺悔については、バックアップがアプリの仕様変更によって消えてしまったにもかかわらず、「投稿者が誰かやアプリを責めず、『自分が悪かったかもしれない』と懺悔をする」心意気が、それぞれすばらしい、と山下さん。二つの懺悔は、「神によって許されました」という。


親の顔に、目を合わせられない

■第三の懺悔(24:29~)
神父様、誰にも言っていない過ちを懺悔いたします......
ゲームのCMを無事に納品した後、きっかけは忘れてしまいましたが、プロジェクトデータを見直したところ、有料の著作権フリーBGMを購入せずサンプルのまま使っていた事が発覚したことがあります。
有料の著作権フリーBGMは、サンプルをダウンロードすると数十秒に1回、サンプルである事を示すボイスが入るのですが、たまたまボイスがない部分を使っていたようなのです。
当日入社2年目で自宅勤務になって間もない頃だった私には相談相手がおらず、既に納品してしまったし、誰も気付かなかったので黙っていることにしました......
今はしっかり確認し、しっかり購入しています。

   読み終わるなり、震え上がった山下さん。クリエイターの誰もが、同じ問題に直面するリスクがあるという。

   山下さん自身、映像制作をする際は様々なサイトから素材を集め、活用している。有料の静止画像や動画素材のサンプルには、著作権表示などを目的としたロゴや文字「ウォーターマーク」が小さく写し込まれる。「加工をしてもよい」と明示されている場合、素材を切り出して使用することがあるそうで、その過程でウォーターマークが見づらくなってしまうリスクが。

   すると、「有料素材のサンプル」を使っていることを忘れ、購入して差し替えることも失念してしまう......なんてトラブルが起きる可能性がある。現代はクリエイターでなくとも、画像や動画制作を業務の一環として行う人が増えている。明日は我が身、の懺悔だ。

■第四の懺悔(34:40~)
クリエイター懺悔したい話
親に懺悔

思い返すと私は欲の少ない子供であった。
買って欲しいのを我慢しては褒められていた。そんな自分だが、転機が訪れる。
凄いデザインセンスのアニメーションを見てしまった。
運命的なであい。
初めて人生を賭してやりたい事......欲......強い意志が芽生えて親に伝えた。

そうすると芸大を目指すということになった。 国立。 東京芸大だ。
どうしても金かかるから国立へ行くようにと言われた。私立の美大は、 有名な話だが莫大な学費がかかるのだ。
対して国立の芸大は安いのだが難関中の難関。 東京大学より難しいとまで言われる。 40浪した人物のうわさも聞いたほどだ。

私は努力をしようと誓った。親はそれを承諾した。

それが高校3年の夏の話の話である。
それが。
そ、れ、が。

......第一回「山下賞」に選ばれた超大作の懺悔は、なおも続く。この先は画でお見せしよう。



   何度か甘噛みしながらも、無事に懺悔を聞き届けた山下さん。要素がてんこ盛り過ぎてどこからつつけばいいかわからないが、と前置きしつつ

「クリエイター全員が全員、稼げていないわけではないですからね! どの業界でもそうだと思いますけれど」

と一言。今後クリエイターを目指している人に絶望だけを与えるわけにはいかない、という思いがあるようだ。さらに、「美大を無事に卒業し、いま動画編集会社にいるということは、少なからず知見を活かしている」と説明。現時点で生かせていないスキルがあるにしても、今後ずっと生かせないかどうかはわからない、とエールを送った。

   自身も美大を卒業した立場から、「美大へ進みたい」と親へ相談した時のエピソードを紹介。学費を出してもらったことへの尽きせぬ感謝を述べ、「頑張らなきゃ、という思いは、この懺悔をした人と全く同じ」と明かした。


   かくして四つの懺悔を聞き届けた山下さん。イベント終盤には、なんと自ら番組中に生懺悔をする展開に。その内容とは(54:20~) 。

   第二回「作リエ懺悔室」は、2024年に実施予定。24年1月10日は通常版作リエとして、ゲストを招いてスペースを行う。

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