「VRゴーグルつけて寝落ち」続出 馬車に揺られてまったり「Carriage Inn」

   馬車に揺られ、うとうとしたり、ゲームに興じたり、景色や動画を見たり、ゆったり過ごすひと時を楽しめるVR空間がある。メタバースプラットフォーム「VRChat」内にあるワールド「Carriage Inn」だ。

   馬車を曳く「カラカラ音」が心地よく響く、静けさに満ちた空間で、一対一で誰かと話したい時にうってつけ。馬車内にあるボタンを押すと、電気やカラカラ音も消せる。リラックスするあまり、VRヘッドセットをつけたまま現実世界で寝入ってしまう人も多々いるそう。VR記者カスマルが「Carriage Inn」を取材のために訪れると、驚きの光景が広がった。

旅の馬車に浸りながら、ゆったりと語らえるVR空間「Carriage Inn」
(右から)鮫本さんと、VR記者カスマル
ワールドの説明をする鮫本さん(後ろは鏡になっているため、後ろ姿が映っている)
話を盛り上げてくれるサイコロ
電気を消した馬車内
見渡す限りの「霧がかった荒野」を行く。馬の背に哀愁が漂う
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あてどない旅へ

   ワールドに入るとそこは、既に馬車の中。ただカスマルの体が大きすぎて、幌を突き破ってしまっている。幌と被って何も見えない。

カスマル「なんだなんだ? 中が見えないぞ......」

   あたふたしていると、どこからか声が。

「『設定』からアバターのサイズが変えられます。試してみてください」

   指示に従って操作するとアバターが小さくなり、無事に馬車の中に入ることができた。このように、ワールドにアクセスして「馬車の中に入る」には、アバターの身長を任意で小さくする必要がある。

   謎の声の正体は「Carriage Inn」制作者の「鮫本(samemoto)」さん。「無事に入ることができてよかったです」と笑顔で迎えてくれた。


馬車に入り、一息ついたカスマル

   馬車内には、クッションがたくさん並んでいる。現実世界や時間を忘れて、思い切り寝転がりたくなった。おしゃれなベッドルームのよう。白みがかった木目調の天井と壁で、木のにおいが漂ってきそうだ。


馬車内にある画面には、動画が流せる

   狭苦しい印象がないのは、半屋外のような造りになっているため。簡単に外へ出ることができ、馬車を曳く馬の後ろ姿と、見渡す限りの「霧がかった荒野」を眺められる。あてどない旅の途中......そんな気持ちにさせてくれる。

   屋外スペースには、ペンが置かれていた。馬車内のあちこちに自由に文字を書くことができ、訪れる人同士でのコミュニケーションツールとして活躍しているそうだ。例えば、先客が寝入っていたら、起きた時に気づいてもらえるよう「おはよう」などと書き残す人がいるそう。


ペンを使って挨拶をするカスマル

   集った人たちの間で、何を話したらいいかわからない時に頼りたいのが、サイコロだ。それぞれの面に「自己紹介(好きなもの)」、「どっち派」などお題が書かれている。転がして出た目に沿って、会話を楽しめる。

   鮫本さんによると、VRChat内の各ワールドには人がたくさんいることが多く、少人数で話し込める雰囲気の場所がなかなかない。それに比べ、「Carriage Inn」は、友達を自宅に呼んで遊んでいるような気分を味わえる。二人きりでしっぽりと語らいたい夜もあるだろう......。

鮫本さん「修学旅行や学生同士のお泊り会など、リラックスした状態で、寝る時にしかしないような恋愛話や怖い話ができるのも魅力の一つです」
カスマル「懐かしい。とてもいいですね」

しっぽりと語らえる空間

元は「非公開」ワールド

   鮫本さんによると、もともと「自身が手掛けたワールドを宣伝するのが、得意ではなかった」。そのため、Carriage Innも作ってからずっと非公開にしていたそう。

   ある時、VRChatの「友達」専用で公開した際に、あるユーザーがとても気に入り、「普段も使いたいから公開してほしい」と言われたという。一般公開をしてからは、色々な人がCarriage Innを利用している写真をX(旧ツイッター)などで見かけ、「作ってよかったなと思っている」と話す。

   鮫本さんは、学生生活や部活動、演劇といった、「昔に戻れたらもう一度やってみたいことをできる環境」がVR上にはあると感じている。Carriage Innを通じ、「私の思う『旅の馬車に浸りながらゆったりお話しをしてみたい』を実現できて嬉しい」と語った。

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