VR記者、即興劇で笑いを取る 初心者も観て、参加して楽しい「VR演劇」

   ダンスや演劇はもはや、「現実世界」だけのものではない。メタバース(仮想空間)内で、アバターを操るユーザーが芝居やダンスなどを披露する「VR演劇コミュニティ『メタシアター』」(主催:メタバースユーザーの「ぬこぽつ」さん)が、2023年11月23日~26日に行われた。出展ブースを中心とした「エントランスワールド」と、大中小の3つの劇場で構成されたVR空間で行われるイベントだ。

   今回は、XRをテーマにした常設施設「新宿NEUU」(東京都新宿区)でも観劇できると聞き、VR記者カスマル(リアルの姿)も足を運んだ。観るだけかと思いきや――驚きの展開に。

なんでもありの即興劇
「新宿NEUU」にて、VRゴーグルをかぶり、VR演劇を観ている様子
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稽古や舞台は全国各地からフルリモートで

   カスマルは、11月24日11時~13時の会を取材した。メタバースやVR空間上で4人がパフォーマーとして活動するチーム「カソウ舞踏団」、VR空間でインプロ(即興劇)パフォーマンスを行う演劇団体「白紙座」が、それぞれが30分程度上演する。

   リアル会場に用意された席に座って、渡されたVRゴーグルを被る。カスマルはいつもの姿ではなく、今回は妖精のアバターになって、VRChat内の特設ワールド(劇場)に入った。


妖精アバターに扮したカスマル

   特設ワールド内には、カスマルの他に参加者が4人。全員、妖精の姿で待機していると、4人のアバターが瞬間移動で登場し「カソウ舞踏団」の公演が始まった。

   ダンスのショースタイルだ。本当に目前で、生身の人間がダンスを踊っているかのようななめらかな動き。流れる音楽に合わせて衣装を変えたり、アバターの後ろに煙や花といったアイテムが次々に出たり消えたりと、VRならではの演出が施されていた。衣装はその時々のイベントに合わせて変えているという。今回は和洋混ぜ合わせたようなデザインだった。


「カソウ舞踏団」のパフォーマンスの様子

   「カソウ舞踏団」団長によると、団員全員が稽古や舞台を、自宅からフルリモートで行えることが魅力だという。

カスマル、「観客から爆笑される」の巻

   ワールドを移動し、「白紙座」が登場する舞台へ。

   今回は観客も参加する演目ということで、「白紙座」の団員・ききょうぱんださん、凛さんと一緒に、カスマルもお芝居。テーマは「なんでもあり」だという。一回の公演時間は1~2分程度なので、初心者でも安心だ。

   司会から、「お題は何にしましょうかね、出身はどちらですか」と聞かれ......今日「VR記者カスマル」の中に入っている人格の出身地である「和歌山」と答える。どうやら、ききょうぱんださん、凛さん、そしてカスマルは「和歌山の地元の友達」という設定になったようだ。即興劇は初めてだが、うまく演じられるだろうか。

ききょうぱんださん「今日どこいく?」
カスマル「安定のドンキ(ドン・キホーテ)は?」
ききょうぱんださん「誰か車運転できる?」
全員「「できない......」」

芝居をしている様子。全員、車を運転できません(画像提供:甘野氷さん)

   「じゃあ、どこいく?」と、ききょうぱんださん。カスマルは困っていました......。

カスマル「......家の近くに、ドンキと公園しかない」
ききょうぱんださん「え? ドンキと公園しかない?」

   会場からは笑いが。凛さんが「じゃあ、ブランコしにいく?」とフォローしてくれたものの、カスマルの実家近くの公園に、ブランコはない。正直にそう答えたら、観客たちからまたもや笑い声が上がった。

   もしかして、現実の設定に寄せすぎなくてもいいのかもしれない。気を取り直して話を続けようとしたら、終了のベルが鳴った。あまり、上手くできなかったかもしれないと反省したが、司会からはこんなコメントが。

「自然な友達同士の会話でした。一番、笑いを取っていましたよ」

   面白がっていただけたようで何よりです。和歌山にはもちろん「ドンキと公園」以外にもたくさんの見どころがあり、魅力的な場所なので、ぜひ遊びに行ってみてください。

   演者は公演ごとにシャッフルされ、変わる。他にも、冒険者や満員電車などのコンセプトで他の参加者が芝居をしていた。

好みの姿で芝居ができる

   即興劇終了後、主催の「ぬこぽつ」さんに話を聞いた。VR空間やメタバースで活動するVR演劇コミュニティ「メタシアター」を運営し、参加者の公演のサポートやイベントを開催している。

   「ぬこぽつ」さんによると、VR上での演劇を、新宿に実在する「リアル会場」で見る、ユニークな取り組みの背景には、「現実世界で演劇をやっている人や、VR演劇を知らない一般人にも、認知が広がってほしい」という思いがある。

   VR演劇は、会場を借りる際に費用が一切かからないことや、現実では行えない演出ができること、好みの姿で芝居やパフォーマンスができるのが魅力だという。

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