AI生成の非実在インフルエンサー女性 インスタグラムにTikTokなど次々登場
SNSに出現した、女性インフルエンサーの華やかな写真。投稿に目を奪われていると、実はAI(人工知能)によって生成された架空の人物だった!?――。こうしたAIグラビアモデルやAIタレントが増えてきている。
Web広告代理店会社「Les」(東京都中央区)は、2023年11月14日、AIグラビアアイドル「藤原れい」の写真集の発売を発表。「藤原れい」は正体がAIだと隠して5月にインスタグラムアカウントを開設。約1か月半で、1万人のフォロワーを獲得したという。
TikTokでバズる
AIによって生成された、実在しない女性。話題になった例を振り返ると、たとえば23年5月28日、週刊プレイボーイの公式X(旧ツイッター)は、AIグラビアアイドル「さつきあい」の写真を投稿した。実写との見分けがつかないリアルな女性が描かれている。投稿内では「『AIグラビア』、あなたはアリですか?」と投げかけ、さつきあいのデジタル写真集「生まれたて。」について告知した。
一方その後、週刊プレイボーイのグラビアコンテンツサイト「週プレ グラジャパ!」上で写真集の販売終了を発表。「生成物の商品化については、世の中の議論の深まりを見据えつつ、より慎重に考えるべきであったと判断するにいたりました」とのことだ。
同じく5月ごろには、「神宮寺藍」という、TikTokやX(旧ツイッター)、インスタグラムにアカウントを持つ女性も話題になった。
TikTokのプロフィールには「本業グラビアアイドル」「副業ギャラ飲み」と書いてある。5月20日に投稿された動画は「浮気されて30キロ痩せ」たという、女性のビフォーアフター写真を紹介するというもの。この動画には10万件以上の「いいね」が付くなど、「神宮寺藍」は人気を博してきた。
ウェブメディア「Real Sound」の6月4日付動画によると、「神宮寺藍」は実在せず、書くコンテンツはAIによって生成された画像を使った動画なのだという。実際、TikTokのプロフィール欄には運営組織の名前なのか、「【X AI Agent】」とも書かれている。
社会への警鐘のため「AI」と隠す
伊藤園が9月に発売した新商品「お~いお茶 カテキン緑茶」シリーズ。10月20日付読売新聞オンラインによれば、この商品のテレビCMではAIが作成した女性タレントを採用。こちらにも大きな反響が寄せられているとのことだ。
冒頭の、1か月半で1万フォロワーを獲得したという「藤原れい」。Lesの発表によると、フォロワーや閲覧者のほとんどはAIだと知らず、インスタグラマーとして、モデルの仕事依頼や芸能事務所からのスカウトまで相次いで寄せられたとしている。
AIだと隠した理由には「社会への警鐘」という側面があると説明。人工知能の技術が高度になるにつれ、犯罪などに悪用される可能性もある。そこで、人工知能の魅力だけでなく「だまされるという危険性」を伝えていかなくてはいけないというメッセージを込め、AIだと隠して発信を開始したとのことだ。
今後は「動画コンテンツ」としての発信も考え、開発を進めている。「藤原れい」がLesの取引先企業の商品、サービスのモデルやアンバサーになったり、「将来的にはファッションショーのランウェイに登場する」こともあり得るとしている。