全部見せちゃう「イラストを動画にする過程」 絵本作家と映像作家がライブ

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   第30回のゲストは、イラストレーター・絵本作家のMionさんフリーの絵本作家の働き方、生計の立て方を楽しく語ってくれた。

   今回は、ジェイ・キャストの常設メタバース空間「バーチャ場」で、山下さんとMionさんに合作をしてもらい、模様をYouTube LIVEで配信した。テーマは「イラストを動画にする過程『全部見せます』 絵本作家と映像作家がライブ」だ。

映像作家・山下諒さんと、絵本作家・Mionさんがメタバース空間で合作
Mionさんが描き下ろした「トカゲ」が、山下さんの手で動き出す(模様はアーカイブにて)
クオッカワラビーの日常を描く個人ブランド「くおっからいふ」/Mionさんが手掛けた作品
霜月はるかさんがデザインしたマスコットキャラクター「シモツキン」グッズイラスト(コットンバッグのみ)/Mionさんが手掛けた作品
コーギーバスケット/Mionさんが手掛けた作品
kinari web キャラクターデザイン/Mionさんが手掛けた作品
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手足も目も舌も尾もぬるぬる動く

   Mionさんが描き下ろした、薄いオレンジ色の「トカゲ」の手書き風イラストを、山下さんが動画制作ソフト「After Effects」で徐々に動かしていく。長いしっぽがあり、手足を広げ、舌をぺろりと出したトカゲだ。クレヨンで描いたようなやわらかいタッチながら、獲物を探すような表情をしており、静止画の段階でも動き出しそうな様子を滲ませている。

   山下さんは、作業画面をバーチャ場のスクリーンに共有しながら制作を進めていく。全体図が投影されているかと思えば、いきなりしっぽだけが映ったり、目の白目部分だけが映ったりと目まぐるしく変わる。パーツごとに動きをつけるためだ。


バーチャ場のスクリーンに映っているのは、トカゲの「舌」パーツ

   動画が仕上がっていく過程を見るのは初めて、とMionさん。普段はあまり爬虫類を描かないうえ、静止画を手掛けることが多いので、動画用に「パーツごとにレイヤー分け」する機会もそうそうないそうだ。目一つとっても、これまではつぶらな黒目キャラをよく描いてきたが、今回は白目部分も取り入れ、動きを付けやすいように工夫している。映像作家との合作ありきで生み出した作品であるようだ。


白目と黒目があることで、視線の動きを表現できる

   イラスト制作にあたっては通常、描く対象の実物写真や、参考になる既存イラストといった資料集めをするといい、今回はYouTube動画でトカゲの動きをよく見たという。

「手足がかなり動く生き物なので、イラストでも手足が他の部分と被らないように、しっかりスペースを空けながら描くことを意識しました」

   山下さんの作業開始から約25分が経った頃には、トカゲの全身がぬるぬると動くように。真っ黒だった背景も、木目調に変わった。さらに、トカゲは最初から画面内にいるのではなく、右下から登場するようだ......。


突然現れた、木目調の背景

   Mionさんに「いやー、すごい!」と言わしめた、完成動画はアーカイブにて(52:40~)。

   なお、合作お披露目後は山下さんによる解説タイムも実施。「After Effects」の画面は、見慣れない人にとっては難しそうな英数字の羅列ではあるが、説明が加わると、映像作家が普段どのような仕事をしているのか、片鱗を味わえる。(53:05~)。

合作で見えてくる「自分らしさ」

   作リエ終了後の二人に、合作を振り返ってもらった。山下さんは、見られながらの動画制作で「かなり緊張した、きちんと整理して編集せねば!と思いながら作っていた」。終えてからアイデアがわいてきたようで、

「絵本作家であるMionさんに描いていただいたのを生かして、絵本が動いているようなイメージで作ればよかった! 鉛筆をこすったような質感にしたり、画用紙のテクスチャを載せたり......」

と話した。1時間では到底足りなかったようだ。

   Mionさんはフリーランスとして活動しており、他の人との合作やコラボをすることがなかったため、「自分の絵を生かしてもらう」作業をライブ配信で体感できたのは、貴重だったとコメント。山下さんに対し、「映像作家さんは本当に日々繊細で大変なお仕事をされているな、と改めてリスペクトの気持ちが高まった」と述べた。

   また、番組中に出た「自分らしさ」の話題に言及。

「各々の持つその人らしい作品、味というものを改めて考えるきっかけになりました。これからの活動の中で『自分らしさ』を改めて考えながら制作していきたいです」

   相手が創作しやすいように、という配慮は大切だ。しかし同時に自分らしさも遠慮せず表現し、個性を重ね合わせた先に「一人では生み出せないもの」を見出すのが合作の醍醐味だと、気づかせてくれる。

   第31回作リエは、2023年10月18日実施予定。

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