不登校や悩み抱えた子向けメタバース活用 3Dと2Dそれぞれのメリット

   メタバースを教育分野に活用するケースを、よく見かける。不登校や悩みを抱える児童や生徒を支援し、インターネット上の仮想空間でフリースクールや居場所づくりの機会を提供するものだ。

   用いられるメタバースの性質は、大きく2つに分けられる。奥行きがある3D(三次元)空間と、ドット絵やイラストで構成された平面の2D(二次元)空間だ。それぞれのメリットを、考えてみた。

令和5(2023)年度の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」 (画像は東京都公式サイトから)
2022年度では2Dだったが (東京都公式サイトから)
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「3D望む声」も2Dに否定的ではない

   東京都では、メタバースを使った「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」を2022年12月から実施している。都内市区の教職員などが、仮想空間で子どもに日本語指導や不登校支援を行う。

   昨年度は、2Dメタバースを使っていた。当時の発表資料を見るに、上から見下ろした視点でアバターが空間を行き交うシンプルなデザインだ。だが2023年9月22日付発表によると、プラットフォームは今年度3Dに切り替わった。都教育庁の教育政策課に取材すると、この変更において、「2Dか3Dか」に特別に焦点を当てたわけではないという。

   提供コンテンツや教材をふまえ、プラットフォームにて提携する民間業者を切り替えた。そちらは空間の提供形式が3Dだったため、結果的に2Dから変わったとのことだ。

   もともと参加児童からは、3D空間を望む声は一定数あった。かといって、2D空間に対して否定的なわけでもないと続ける。

   教育政策課によると、推測にとどまるものの、子どもからすれば「3Dの方が没入感は高まる」と考えているという。また現在は、相手のアバターが近づくと声がだんだん大きくなる仕組みになっており、この仕様も没入度を上げるのではないかとした。

   3Dならではの懸念事項もある。空間内で道に「迷う」現象があり得ることだ。VRゴーグルは使わないが、「酔う」可能性もある。

   バーチャル・ラーニング・プラットフォームに参加する都内市区の教職員は、正規教員だけでなく、すでに定年退職を迎えた人もおり、児童の対応する場合があるという。情報通信技術や3D空間に不慣れだと、操作に時間を要する可能性がある。こうした課題が生じた場合、できる限り早期に対応していきたいとのことだ。

シンプルアバターが「受けそう」

   神奈川県の「相模原市立青少年相談センター」では、3Dメタバースプラットフォーム「DOOR」を使った「チャレンジ教室」というイベントを、2022年12月に開催した。集団での活動が苦手な児童、生徒が対象で、ものづくりや人と交流の楽しさを味わえる企画だ。

   京都府で10月22日まで実施している、メタバース不登校学生居場所支援プログラム「ぶいきゃん2023 京都」。こちらは3D方式の「VRChat」を使用し、バーチャル空間内での世界旅行などを行う。

   半面、2Dの事例も多い。例えば、NPO法人日本教育再興連盟が8月から進める「孤立・孤独感を抱いているギフテッド傾向のある子どもの居場所支援事業」。優れた知的能力を持つ「ギフテッド」の小中学生向けに、「できる~む」という空間を提供する。「Topia」という2Dのメタバースを使用。色のついた棒人間のようなシンプルなアバターが特徴だ。

   J-CASTトレンドは8月、運営の日本教育再興連盟に取材している(2023年8月19日付記事を参照)。「アバターのデザインや動きなどが、子ども受けしやすいと感じ」ため選んだとの説明だった。

   オンラインのフリースクール「みんなの学園」は、教育事業会社「ハッピーエデュケーション」(大阪市)が運営する。公式サイトによると、オンライン上に「メタバース校」を展開しているという。仮想校舎の様子がわかる画像は記者が調べた限りは見つからなかったが、「あえて子どもにゲーム感覚で楽しんでもらえるよう、2Dを採用しました」とのことだ。

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