「5つのマインド」心がけて周囲に溶け込む 学校や職場で居場所を作るには
【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第29回のゲストは、クリエイター集団「前田デザイン室」コミュニティマネージャー(運営リーダー)のミッチーさん。作リエ史上初、「いちリスナーからゲストになった」人物だ。
テーマは「学校、職場、オンラインで居場所を作り、楽しむには 周囲に溶け込みやすくなる『5つのマインド』」。スペースアーカイブはこちらから。
「キーボードを叩きながら人の話を聞く」のは...
知り合いゼロ、SNSのフォロワーゼロ、オンラインコミュニティ経験ゼロ。「ないない尽くし」にもかかわらず、思い切って「前田デザイン室」に飛び込んだミッチーさん。デザイナーとして活躍した結果、運営リーダーになったのか...と思いきや、そうではない。現在は洋菓子工場に勤務しており、プリンやケーキなどの原材料管理が本職だ。
前田デザイン室コミュニティマネージャー(運営リーダー)のミッチーさん
「前田デザイン室」にはカメラマンやプログラマー、税理士、主婦など「プロのデザイナーではない人」も多く所属しており、会員数は約260人にも上る。年齢、住む場所、職種が異なる人々が、仕事では作れないような面白いもの、変なものを生み出すため、アイデアを活発に出し合っているという。例えば、雑誌、ウェブサイト、カードゲームに展覧会、果ては「モザイクが入った『いつ履くんだ』というようなパンツ」まで生み出してきた。
ミッチーさん曰く、一つのものを作るには「さまざまな角度からの視点と、思いもよらない役割が必要」。山下さんも、
「クリエイターだけが集まると、こねくり回して色々考えてしまう節がある。フラットな意見を頂けるという意味で、色々な人が組織に入るのは理に適う」
と話した。多様な力を掛け合わせて挑戦した先に、新しい価値や発想が生まれるのだ。
こうした個性豊かな集まりにジョインするにあたり、ミッチーさんは緊張していた。しかし「せっかくオンラインコミュニティに入るのだから、何かをつかみたい」と、これまでに学校や職場で意識してきた5つのマインドを「前田デザイン室」でも実践。新たな場所へうまく溶け込み、やがてはコミュニティマネージャー(運営リーダー)になるに至った。環境を問わず、今すぐ生かせる内容だが、どれも「言うは易く行うは難し」だ。
(1)相手に向き合う:知ろうとする。積極的に、興味関心や敬意を示す
(2)自分の意見も尊重する:「自分だからこその価値」を、言葉にして伝える
(3)偶然を大切にする:「食わず嫌い」をせず、未知への挑戦を楽しむ
(4)なんでもやろうとしない:選択肢を無闇に広げない、時間や予算の制約を含めてデザインしていく
(5)あきれるくらいにしつこく・粘り強くやる:思うだけでなく、行動して形にし続ける
(1)についてミッチーさんは、具体的な例を挙げた。誰かから仕事中に相談を持ち掛けられたので、パソコンのキーボードを叩きながら話を聞いた――こういう経験に心当たりはないだろうか。それでは相手に向き合ったことにはならないと、ミッチーさんは以前務めていた会社の社長に教わったそうだ。忙しくても作業の手を止め、人に体を向けて話を聞く。ちょっとした気遣いで、相手に与える印象は大きく変わる。
なお(1)と(2)はセットで考えるのがポイント。(1)だけでは与えられるばかりになってしまう恐れがあり、意見交換をしてこそ信頼関係を築ける、との考えがある。各マインドについての詳しい説明はスペースを参照のこと(25:50~)。
「人より秀でたものがない」クリエイターへ贈る言葉
任天堂の大ファンである山下さんからは、「前田デザイン室」室長・前田高志さんにまつわる質問も飛び出した。元・任天堂デザイナーである前田さんによる、「クリエイターに刺さる名言」を聞いて、すごさの片鱗を少しでも味わいたいそうだ。
ミッチーさんは「皆さんの考える前田さんと、僕が身近で見てきて感じた前田さんとはもしかしたら違うかもしれない」と前置きしつつ、自分の心に深く響いたフレーズを紹介してくれた。「人より秀でたものがない」、「何をやればいいのかわからない」と立ち止まってしまっているクリエイターへ贈る言葉だ(53:20~)。
「誰でもできることを、誰よりもやれ」
最後に、作リエ恒例の質問「仕事をする上で最も大事にしている、クリエイティブの柱」について。ミッチーさんの答えは「当事者になること」だ。「自分事化」とも言い換えられる。どんなことも「自分だったらどうするかな」と考えるようにしているそうだ。
「イベントもモノ作りも、やらされているとあまり面白くないのですが、自分事になっていると楽しい。全てがチャンスに見えてくるし、周りの人も認めてくれると実感しています」
スペース終了後の二人に話を聞いた。山下さんは、一つ一つのマインドが心に深く突き刺さったそう。耳に痛いエピソードが少なくなかったようだ。
「スペースが終わった後には、やつれていたと思います(笑)......が!良薬は口に苦しと言う通り、今回話していただいたことを肝に銘じて生きたいと思います!」
ミッチーさんは、「前田デザイン室」での活動を通じ、作リエ第27回ゲストのMionさんと知り合っていたことで今回の出演につながった経緯に触れ、
「これからも偶然を大切に、(でも、なんでもやろうとはせず無理なく...笑)、未知への挑戦を楽しんでいきたいと改めて思いました!」
と、スペースで紹介したマインドも踏まえてコメント。良き出会いと縁に感謝した。
第30回作リエは、2023年10月4日実施予定。