企業や自治体作ったメタバースに入ったら「誰もいない」 ユーザー集客ねらうには(後編)

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   企業や自治体が作ったメタバース(仮想空間)にログインしたら、誰もいない――。J-CASTトレンドではこうした現象について、前回はメタバースのマーケティングや仮想空間のプロデュースを手がける東智美(ぴちきょ)さんに取材した。

   人が来ないメタバースだと、ユーザーが「ぼっち」状態となり、定着しづらくなる現象。これは、「多くの企画者やクリエイターが頭を悩ませるポイント」との話だった。多くの人を呼び込み、ユーザーを定着させるにはどうすればいいか。メタバースクリエイターズ(東京都渋谷区)の代表取締役社長・若宮和男さんに取材した。

メタバースクリエイターズ代表取締役社長・若宮和男さん アバターの姿で取材に応じた
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「非同期」性を絡めて

   同社ではメタバースの世界で活躍するクリエイターが所属しており、仮想空間に関するコンテンツの企画や制作を手がけている。

   メタバースに多くの人が訪れるのに必要なポイントは3つあると若宮さんは語る。まずはユーザー同士で構成するコミュニティーの存在だ。これの構築には、「非同期」性を持たせられるかがカギになるという。

   たとえばX(旧ツイッター)のようなSNSでは、つながっている人同士が同時にオンラインになっていなくとも、互いの投稿をチェックし、「いいね」などのリアクションを送りあえる。非同期状態でも、コミュニケーションがとれるわけだ。

   ところが、ソーシャルVRサービスでありメタバースプラットフォームとも呼ばれる「VRChat」を例にとると、こちらでは相手と自分が同時にオンラインしていないと交流が難しいと続ける。

空間の広さもカギ

   メタバースに同期性が必須だと、仮想空間内のイベントで他のユーザーと知り合っても、その後たまたま同じ瞬間にログインしていないと再度コミュニケーションができないのだ。対応策の例として、コミュニケーションツール「Discord」の活用を挙げた。こちらでは「サーバー」と呼ばれるコミュニティー機能が備わっており、所属する複数のユーザーがチャットや音声通話できる。

   メタバースに関連したサーバーを作っておき、仮想空間にログインしていなくてもユーザー同士がつながれるコミュニティーを提供する。こうした仕掛けが「大事になるかと」と考えを語った。外部ツールを通して、ユーザー同士がメタバース上で待ち合わせをするのにも使える。

   非同期性をうまく活用しているメタバースの例に、アジア最大規模のメタバースプラットフォーム「ZEPETO」を挙げた。こちらは仮想空間に集まって交流するだけでなく、ユーザーがインスタグラムやTikTokのようにプラットフォーム内のSNSに動画を投稿し、「いいね」を送りあえる仕組みがあるという。

   2つめのポイントは、空間の「広さの設計」だ。たとえば自治体が地方の魅力などをアピールするため作る仮想空間では、「街」を作ることがある。ところが街ほどの広さで設計すると、ユーザー同士のアバターが出会いづらくなり得る。またコミュニケーション時に「外でずっと立ち話」をするような感覚になってしまい、そこに留まりづらくなる。

   あまりに空間が広すぎると「人と出会えないし、誰もいなくて帰る」との現象が起きるため、適度な広さを保った設計が必要とした。

イベントを開いても非日常だと...

   3つめのポイントは、メタバースの「日常化」だ。メタバース上の空間の性質を「日常、非日常」で分けてみると、バーチャルライブや展示会などのショールームは非日常に該当する。

   現実で毎日展覧会に行く人がいないように、「非日常」的なワールドには人が日常的には訪問しづらくなるとの指摘だ。たとえばイベント時にはユーザーと隣り合った人同士で会話をするように促すなど、コミュニティーを作る仕掛けが必要とした。

   一方、「日常的なコンテンツ」もバーチャル上にはある。例として、語学学習や「ラジオ体操」を趣旨とした空間だ。アクティビティーやコンテンツが日常的なものだと毎日訪問しやすく、ユーザーの滞在時間も長くなる。ユーザー同士の出会いも生まれやすくなると指摘した。

「いつも友達がいたり、いつもやることがあったり。『いつもの場所』にしていかないと、メタバースはどこまでいっても『非日常を味わうためのもの』になってしまう」(若宮さん)

   最後に、プラットフォームを作るうえでは、UGC(ユーザーが自発的に生み出すコンテンツ)が重要だと若宮さんが指摘する。ユーザーがコンテンツを楽しむだけにとどまらず、「作る側」やクリエイターにまわると、最も定着しやすいとのことだ。何かを作る楽しみを提供することも、メタバースプラットフォームを作るには大事なことと説明した。

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