「フリーの絵本作家」働き方を解剖!  美大に行かないとダメ?生計の立て方は

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   第27回のゲストは、イラストレーター・絵本作家のMionさん。テーマは「『フリーの絵本作家』働き方を解剖! 美大に行かないとダメ?生計の立て方は?」だ。スペースアーカイブはこちらから。

クオッカワラビーのピクニック
柏の葉(千葉県柏市)キービジュアル
「Food 2023」に掲載されたMionさんのイラスト
真庭あぐりガーデン施設内マップ
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生計を立てるうえで「すごく大事」なこと

   あたたかみのある、やさしいタッチのイラストを描くMionさん。「世界一幸せな動物」とされるクオッカワラビーの日常を描く個人ブランド「くおっからいふ」作者で、LINEスタンプやオンラインでのグッズ販売に加え、企業からの絵本やキービジュアルなどの制作依頼を受けながら身を立てている。

   もとは「趣味」で絵を描いてSNSに載せていたのが、企業の目に留まって仕事につながったことで、フリーランスとして活動するようになった。


「食」をテーマにしたアートブック作品集「Food 2023」にイラストが掲載

   「絵本作家とは、具体的にどんなことをしているのか」と山下さん。絵本の制作依頼を受けると、Mionさんはまず「何を伝えたいのか」を相手に聞くという。依頼人が文章を用意している場合、それをもとに各ページの構図や結末を考えていく。「文章もお任せ」パターンもあるそうだ。

   絵本作家になるためには美大進学が必須――かと思いきや、「美大には、合格したものの母親の反対で行けなかった」とMionさん。イラストの描き方は、参考書や解説書、YouTubeの動画で必死に勉強した。

   「美大に通わずとも絵本作家になれる」と自身で証明しているが、「周りから刺激を受けるし、大学でしか学べないことがあるので、行けるなら行った方がいい」と言う。行かないメリットにも触れつつ、たくさん苦労はするから覚悟が必要だ、と語る。個人での学習は、自分の好みや興味に影響を受けるため、「視野がどうしても狭くなる」。何でも実際に見たり、やってみたりと、あらゆる物事に積極的に関わって吸収する姿勢が重要だ。

   このマインドは、「フリーランス」という働き方そのものにも通ずる。例えば、営業活動なしに仕事を受注するのは難しい。必ずしも「やりたいことだけやっていれば、依頼が舞い込み続ける」わけではないのだ。

   Mionさんも「生計を立てるには、営業がすごく大事」と繰り返し口にした。ポートフォリオを作り、出版社などに電話やメールを通じて自らを売り込んできたそう。今すぐ仕事をもらえなくても、数年後に実を結ぶ場合もある。先を見据えた種まきだ。

   「手っ取り早く、仕事が欲しい」場合は、フリーランス向けの仕事募集サイトを探して案件に応募し、採用されるのを目指せばよい。ただ、Mionさん曰く「今は、思いがけないところで誰かが自分の作品を見ていて、仕事につながる『チャンスのある時代』」。それぞれの得意分野を生かしてSNSで継続的に発信し、企業の目に留まるための努力が欠かせない。

   方や「お酒の席が好き」な山下さんにとっては、「交流会になるべく積極的に参加して、人の輪を広げていく」のが営業活動だ。売り込み方一つとっても、得意分野を生かさない手はない。

「絵本を読むのは子供だけ」と決めつけないで

   終盤、山下さんから「絵本作家を目指す人へのアドバイスは」と話を振られたMionさん。絵本とは「子供が読むもの」というだけでなく、「大人が読み聞かせる」イメージもある、と前置きし、こう続けた。

「絵本を読むのは子供だからと決めつけず、大人でもほっこりできるように、と幅広い世代の人のことを考えて作っていく。すると、作品がもっと多くの人に届くのではないか」

   すると山下さんは、作リエ第二回ゲスト・しょーたさんとの対談を思い出した。「子供向けと子供だましは違う」という話題だ。詳しくは記事あるいは、スペースにて(54:55~)。

   その他、フリーランス特有の醍醐味に悩み、一日の過ごし方(18:53~)、自己管理の難しさ、失敗談など、赤裸々な話題が続々。例えば、「クライアントとの、メールでのやりとりの難しさ」。強く出られたり、無理難題を強いられたりしても、後ろ盾のなさや、「断ったら次に仕事をもらえなくなるのでは」という不安から、要求を飲んでしまいがちだという(49:26~)。


柴犬LINEスタンプ

   スペース終了後の二人に話を聞いた。Mionさんはこれまで、仕事に関する考え方や、絵に対する思いを公の場であまり話すことがなかったそう。また、「自分は絵を描く人間なので、そういったものも求められていないのではないか」と考えていた。しかし作リエに参加し、考えを山下さんやリスナーと共有したことで新たな発見があったという。

「絵だけでなく、想いを伝えることもクリエイターとしての役割なのかなと感じました」

   山下さんは、フリーランス仲間がゲストだったとあって、「ものすごく共感できる部分もあれば、参考にできる話もあり、まるで情報交換会をしているよう」と振り返った。特に、「別界隈のフリーの生計の立て方は非常に興味深かった」そうだ。

   第28回作リエは、2023年8月23日実施予定。

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