メタバースで不登校生徒「居場所支援」プログラム アバターならではの「匿顔性」
メタバースを使い、不登校の中学生・高校生の「居場所支援」をする動きがある。一般社団法人プレプラが、京都府のものづくり振興課と共催するメタバース不登校学生居場所支援プログラム、通称「ぶいきゃん2023 京都」だ。
参加は無料で、参加者にはVR(仮想現実)ゴーグルを貸与。メタバース内での探索や、VRの世界で活躍するクリエイターとの交流を通して、自分の興味や可能性の再発見をする機会を提供する。
クリエイターとの交流から教育プログラムまで
「メタバース不登校学生居場所支援プログラム」は、2022年9月26日~10月8日にも広島市内の不登校生徒を対象に行なった。プレプラの23年8月7日付発表によると、前回の取り組みをもとに、「本格型」として今回のぶいきゃん2023 京都を実施する。京都府在住の不登校の中学生・高校生20人が対象だ。
実施期間は9月25日~10月22日の約1か月。プログラムには、メタバースプラットフォーム「VRChat」を利用する。
プレプラ代表理事の水瀬ゆずさんに取材した。プログラムは大きく、第1週から第2週の「ぶいきゃんぷ」と、第3週から第4週の「ぶいきゃんぱす」で構成される。
「ぶいきゃんぷ」ではメタバースで活動するクリエイターや不登校経験者との会話を通じて、自分の知らない生き方や考え方に触れる講演会を実施。またVR空間内での世界旅行など、他参加者と交流しながらVRChat内のコンテンツをめぐるという。
「ぶいきゃんぱす」では協賛企業と連携し、金融やITリテラシーに関する教育など、「教育課程で示すところの『総合的な学習の時間』のようなコンテンツを提供」するとのことだ。
メタバース使うメリットは
不登校生徒の居場所支援にメタバースを用いるメリットは何か。水瀬さんによると、同法人ではオンラインによるアクセス性や、アバターを使用したコミュニケーションのリアリティー、そして顔を隠して参加できる「匿顔性」に重きを置いている。
水瀬さんによれば、不登校生徒にはもともとフリースクールなどの支援体制が用意されてはいるものの、外へと出向く、また知らない人との対面による会話が求められるケースが多い。不登校の当事者が外出や対面コミュニケーションに対応できなければ、ただ引きこもらざるを得ないことがあるという。
「メタバースの特性はそれらを突破する可能性がある」――。水瀬さんはこう捉えている。自宅から参加可能で、顔を隠しながらもVRアバターを用いて、現実のような身振り手振りや、表情のあるやりとりが可能とのことだ。
広島を対象に実施した前回のプログラム参加者からは、最初は緊張したとの声がったものの、最終的には「もっといろいろなことをやりたかった」「またここに来たいと思う」「終わってほしくない」との感想が寄せられたという。
「最終的には誰がスタッフで誰が参加者か傍からは分からないくらい打ち解けていただけました」(水瀬さん)
今回のプログラムの参加者は9月10日まで募集。8月11日と9月9日にはそれぞれ、ビデオ会議ツール「ZOOM」による説明会を行う。先述通り募集人数は20人だが、応募者多数の場合は抽選となる。