マッチョ35人が隅田川花火大会の後を掃除 ちりのかけらも残さない筋肉軍団
東京で4年ぶりに開催された隅田川花火大会。大盛り上がりの翌朝、無残に転がる大量のごみ。この光景を見過ごさない「マッチョ」たちがいた。
フィットネスブランド「VALX(バルクス)」が開催した清掃イベント「ゴミ拾いマッチョ」だ。2023年7月13日に、ごみ拾いに参加する「マッチョ」を募集。花火大会翌日の7月30日朝、たくましい肉体をした参加者が総勢35人集まった。
マッチョが通った後には
暑さがまだピークを迎えていない朝7時30分。すでに摂氏30度に迫る気温のなか、墨田区役所前にマッチョたちが集う。トングやゴミ袋、熱中症対策の塩飴が手渡されていく。
VALXを展開するレバレッジ社(東京都渋谷区)のYouTubeチャンネルでアシスタントを務めている「タケタコタン」さんがあいさつする。今回のごみ拾いイベントは4回目で、過去には渋谷や代々木公園で実施している。「すごく暑いので、とにかく熱中症にならないよう水分補給をお願いします」と注意喚起し、ゴミ拾い開始だ。隅田川の東側沿いを南に、マッチョ軍団が突き進む。
自治体の業者による清掃が行われたのか、区役所から吾妻橋までの道中に目立ったごみはない。しかし首都高速道路の高架下・吾妻橋公園に差しかかると、異変が。公園入口の自動販売機前に、おびただしい量のゴミ袋や空き缶が山積みされているのだ。後ほど、業者が回収するのだろうか。これからゴミが待ち構えていると予感させる光景だ。
公園内に入ると、花火鑑賞に使われたとおぼしきビニールシートやガムテープ、中身の入ったままのペットボトル、空き缶が散乱している。川沿いの通路に至るまで、無数に広がる。マッチョたちの出番だ。
トングで吸い殻や紙くずを次々に拾い上げ、有り余る力でペットボトルを潰し、回収。マッチョたちが通り過ぎた後は、路面清掃車が通ったかのようにごみが消えている。
公園を抜けた参加者たちは駒形橋を歩き、隅田川の西側へ。国道6号線の市街地を、北へと向かう。すれ違う通行人が驚いた様子でマッチョたちを見つめる。開始時よりも強さを増した日差しが肌を焼くように照り付けるが、マッチョたちはさわやかな笑顔を絶やさない。
こちらも道の隅に6本の空きペットボトルが放置されるなど、各所にごみが放置されている。参加者の手により、すぐに回収だ。
マッチョによるごみ拾い活動を通して
吾妻橋を東へ渡り、今度は区役所にもどる。区役所付近の路上は、業者の手が入っているのかやはりきれいだ。しかし「あ、見つけちゃった」とタケタコタンさんの声が響いた。
イベント開始時には気付かなかったが、区役所から川へ向かう階段を降りると、各所にシートや飲料のごみが広がっているのだ。これらも拾い上げ、イベントは終了。「過去最高」レベルの量のゴミが集まったようだ。
レバレッジ広報の関口さんによると、花火大会など催事後のゴミ拾いを趣旨とした団体やイベント自体は一定数存在する。一方で、活動として世に浸透しきっているわけではない。その点「マッチョはキャッチーで目に入る」。ごみ拾いをするマッチョの姿は、街中やSNS上で人目に止まりやすい。これを利用して、ゴミ拾い活動を啓発するのがイベントの目的だ。
参加者の健太郎さんは、満足げに「朝から街をきれいにするのは気持ちいい」と取材に話す。他のマッチョとつながりを持てる点も参加のモチベーションとのことだ。
ひときわ目立つ、隆々な肉体を持つ玻座真(はざま)さんは沖縄出身だが、現在は隅田川の近くに住んでいる。「地域のクリーンアップ(清掃)をしたい気持ち」で参加した。そんな玻座真さんに友人として誘われて来たという木俣さんと斉藤さんもマッチョボディーの持ち主。木俣さんは髪を赤く染め、自身がややいかつい外見をしていると自負しているとのことだが、一方で「社会貢献したい」との思いで参加したと語った。