「狼と香辛料」新作を放送へ ヒット作の再アニメ化続々、専門家の分析は

   人気ライトノベル「狼と香辛料」の完全新作アニメが、2024年に放送されると決定した。同作は08年に続いて2度目のアニメ化。続編ではなく、新作だ。

   実は同作の他にも、続々と再アニメ化が決まっている。その背景には何があるのか。アニメ文化ジャーナリストの渡辺由美子氏に取材した。

2022年2月25日付・KADOKAWAプレスリリースより
Read more...

「SLAM DUNK」「NARUTO-ナルト-」も

   映画版「SLAM DUNK」は2022年、完全新作アニメとして誕生し大ヒットした。原作漫画、アニメ共に海外でのファンも多いこともあってか、中国や韓国でも話題となった。

   また、名作少女漫画「ベルサイユのばら」は、1979〜80年にテレビアニメ化、90年にテレビアニメの総集編として映画化をしている。22年9月、連載開始50周年を記念した劇場アニメ「ベルサイユのばら」の制作を発表した。なお同作は、宝塚歌劇団が1974年に初演以降、何度も再演を繰り返している。2024年には、「宝塚歌劇110周年」を記念して10年ぶりの上映が決定した。

   他にも、7月6日に初回が放送されたばかりの「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(前作:1996〜98年)や、さらにはアニメ「NARUTO-ナルト-」(2002〜07年)が完全新作としてアニメ化を発表している。

   渡辺氏は、こうした現象は2010年代後半から徐々に増えてきたと言う。理由について、消費者・製作者側の観点から変化があると指摘した。

「パッケージ」から「配信権」に

   渡辺氏によると、従来はIP(知的財産)の活用・マネタイズの方法として、映像そのものであるDVDやBlu-rayなどのパッケージ販売といった「売り切りの時代」が長かったと説明する。しかし、近年では「グッズやイベント、ステージ等の展開ができるようになりました」。つまり、IPの持続化という方向に変わったという。

   映像のマネタイズ方法も、最近はパッケージより配信が主流だ。米ネットフリックスや中国ビリビリなど配信プラットフォームが増え、日本アニメの「配信権」が売れるようになった。国内だけでなく海外市場が拡大。日本動画協会の「アニメ産業レポート2022」によると、海外市場は2015?17年に急成長し、20年は日本を抜いたほどだ。制作会社も海外へ目を向けるようになった。

   配信権は人気作・知名度のある作品であれば販売価格も上げられる。「その中で、認知度が高く昔から親しまれている作品が注目を集めるようになりました」と話す。「認知度」には、大人世代の消費者を獲得したい狙いもある。それにより「客単価」が上がるためだ。『狼と香辛料』のファンもここに相当するだろう。

   同時に、アニメ視聴する一般層の拡大も大きいと、渡辺氏は説明する。

女性の「ライト層」に拡大

   一般層の拡大に伴って、アニメ視聴が女性の「ライト層」にも広がっているという。今日、人気が出るアニメは女性ファンも獲得できる作品が多い傾向にあると渡辺氏。これは、ひとつには男女両方を狙った方が、視聴者数が純粋に増えるため。さらにグッズやステージに熱心な層には女性も多いためとの指摘だ。

   2000年代後半に女性層の獲得を狙ったアニメ作品も増えたが、当時は「女性でアニメを熱心に見る」層は限られていた。しかし、現在は異なっているようだ。

「2010年代初めに、男性キャラクターのアイドルアニメやそれに紐づく声優ステージが増えて、それがきっかけとなって女性のライト層が拡大し、グッズを買うようになりました。アニメショップからも、近年は親子連れでの来店も増えたと聞いています」

   2000年代に子どもだった層が大人になり、購買力を付けたことも大きい。幼いころに見ていた作品が「再アニメ化」となると、当然購買欲も湧く。当時と比べると消費額も大きくなるだろう。

   この傾向を踏まえると、今後も「再アニメ化」は増えるかもしれない。

注目情報

PR
追悼