在宅診療所「メタバース」空間にオープン 匿名で病状や健康相談できる

   メタバース(仮想空間)内で、医師に匿名で相談できるサービスが登場した。在宅医療を展開する医療法人社団「しろひげファミリー」(東京都江戸川区)の「メタバース しろひげ在宅診療所」だ。

   2023年6月26日付の発表資料によると、在宅診療所がメタバース空間を開設し、相談を受け付けるのは、日本初の試みという。メタバースプラットフォーム「DOOR」により、スマートフォンやパソコンからアクセスできる。記者も空間内に入り、取材した。

メタバースで気軽に健康や医療相談 (アバターはしろひげ在宅診療所のマスコットキャラクター「ひげぞ~くん」
実際の診療所の社屋1階部分のスペースを再現しているという
メタバース内の診察室 軽食もあってリラックスできる雰囲気
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かわいらしいアライグマがお出迎え

   現実のしろひげ在宅診療所を再現しつつ、白を基調とした明るめなデザインのメタバース空間。アバターを使い、医師や精神保健福祉士、管理栄養士やソーシャルワーカーなど同在宅診療所のスタッフに医療や生活について相談が可能だ。

   「メタバース しろひげ在宅診療所」には、診療所公式サイト内からアクセス可能だ。個別の面談を受けるには、まずメタバース空間から予約。相談内容を踏まえてスケジュールが決まり、アクセス用URLが送られてくる。クリックすれば、パソコンやスマートフォンのブラウザーから入れる。アバターや診療所を再現した3Dモデルは同院のクリエイターが作ったとのことだ。

   記者がしろひげ在宅診療所から送られたURLをクリックすると、パソコンのブラウザーからすぐにログインができた。会員登録は不要だ。対応するのは、院長の山中光茂氏。同診療所のマスコットキャラクター「ひげぞ~くん」の姿で出迎えてくれた。「アライグマのキャラクター」とのことだ。担当する相談員の職種によって使用アバターは異なり、たとえば看護師であればウサギのキャラクターになるという。

気軽に会えるメタバースを通じて

   音声とテキストによるチャットを通して診察や相談ができる。利用は無料だ。終末期のがんや重度の精神疾患を抱える人をはじめとして、日常的な健康相談や栄養相談など、幅広い内容の面談を受け付ける。すでに7月6日に一度、実際にメタバース内で健康相談についての対応をしたという。

   山中院長は、この空間の役割のひとつとして、「若い世代で引きこもっている方々が外と触れ合えるきっかけになれば」と語る。

   院長によると、同診療所の患者は約2割が重度の精神疾患を抱え、外に出られず引きこもっている人もいる。ただ引きこもり状態の人でも、メタバース空間やオンラインゲームの利用を通して、他者と関係を築いているケースが多いという。そこで、メタバースの診療所という手段を通じて、気軽に悩みや疾患について相談できる場をつくりたいと考えた。

   相談内容によっては、訪問診療やクリニックへの来院によるリアルでの診察につなげていく。

   また、しろひげ在宅診療所では、患者や家族による交流会を開いたり、地元の祭に参加したりと、地域とのつながりを重視しているという。メタバース空間でも花火大会や交流会といったイベントを定期的に開く方針とのことだ。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者など、同じ難病や悩みを抱える人同士が集まってコミュニケーションをとる機会を設けることも考えている。

   患者数がどれだけ増えるか、という数字的な目標は定めていない。イベントの実施を通して患者や家族、さらに介護士、ケアマネージャーといった関係職種の人々がつながる場にしていきたいと語った。

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