教員採用「囲い込み」目立つ 応募者減で「教員免許なし」でも...
教員不足が深刻になっている。特に問題なのは、応募者が減って、採用倍率が年々低下していることだ。
そんな中で、要員確保のため、採用方式を多様化することで優秀な人材を囲い込もうとする動きも目立っている。地元採用枠を設ける、地方の教員獲得のため東京でも採用試験をする、プレゼンで採用を決める、貸与型奨学金の返済を一部肩代わりする、などだ。
県内出身者に「特別枠」
島根県教育委員会は2023年度の採用試験から、「島根創生特別枠」を設けた。受験者の数を増やして教員の確保につなげるのが狙いだ。
NHKによると、「島根創生特別枠」は、島根県内出身者で、県内の高校を卒業して島根大学か島根県立大学に在籍し、学長から推薦を受けているなどの条件を満たした人が対象。一般選考と比べて優先的に採用されるほか、試験内容も簡素化される。
徳島県教委は、今年度の試験から、新たに東京会場を設けた。「徳島県出身の方、徳島県に興味がある方、徳島県で公立学校の教員として働きませんか? 教育への熱い想いと、子供たちへの愛情あふれる方のご応募をお待ちしています」と呼び掛けている。
山梨県教委は、優秀な教員の確保を図るため、山梨県内の公立小学校に教諭として一定期間勤務することを条件に、日本学生支援機構から貸与を受けた奨学金の返還の一部を補助する事業を始めている。
岐阜県教委も24年度の新規採用教員を対象に、同じような制度を始めた。採用後7年以上、県内で勤務することなどが条件だ。
「プレゼン」で採用
採用試験の期も早まっている。試験の一部を大学3年生から受験できるようにしている教育委員会も目立つようになった。いわゆる「青田買い」だ。
4年生を対象とした試験時期も、全体として前倒しされる傾向にある。来年度については、文部科学省の要請もあり、これまでよりも1か月ほど早まり、6月に行われるところが増えそうだ。
すでに大半の自治体は、新卒採用に頼らず、「社会人採用」にも門戸を広げている。ただし、例えば東京都の場合、合格から2年以内に教員免許を取得する必要があり、それまでは教壇に立てない。
そんななかで、特にユニークなのは、さいたま市教委が今年度から始めた「パイオニア特別選考」だ。
対象者は、受験する教科の分野で高度な専門的知識や経験などがあるが、教員普通免許状を持っていない人。10分間のプレゼンテーション及びプレゼンテーションの内容に関する質疑を行い、合格後は、特別免許状が授与されて教諭として配置される。
全国の教員試験の倍率は年々低下し、東京都の小学校教員試験の場合、23年度採用者の倍率は1.4倍にまで落ち込んでいる。
いかにして応募者を増やすか。そして、要員を確保するか。とくに優秀な人材は、奪い合いになる可能性が高いだけに、各自治体の教育委員会は、応募者を増やし、合格者を定着させることができそうな採用方法や、魅力的な採用条件づくりを競い合っている。