コロナ感染者、実際はもっと多い? 5類移行で「有料検査」断る患者
新型コロナウイルスが「5類」に移行して約1か月半。感染者の増加傾向が続いている。感染者数は、全国約5000か所の定点医療機関が1週間ごとに新規の感染者数を厚生労働省に報告する「定点把握」方式で調べている。以前のような「全数把握」ではないため、実際の感染者はもう少し多いのではないか、とみる医療関係者もいる。
実際より下振れする傾向
厚労省によると、2023年6月11日までの一週間で、定点当たりの感染者数は5.11人。前週の1.12倍で、5類移行直後と比べると約2倍になっている。厚労省に助言する専門家会議は16日、新規感染者の増加傾向は今後も続き、「夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見通しを示した。
こうした中で、医療関係者の間で、「定点把握」による感染者数が、必ずしも感染の実態を示していないのではないか、との声も出ている。これは 新型コロナの扱いが2類から5類に変わり、医療費が基本的に患者の自己負担になったことが影響しているのではないか、とみられている。
「TOKYO HEADLINE」によると、東京都医師会の猪口正孝副会長は13日定例記者会見で、「検査をお願いしても費用が発生するので患者さんに断られ、定点観測の数字が実際より下振れする傾向がある」と語っている。
「下水サーベイランス」と大きなずれ
呼吸器内科医の倉原優さんも6月16日、「Yahoo!ニュース個人」で、「検査が有料になったこともあり、感染者数はかなり低く見積もられている可能性があります」と書いている。
倉原さんは、水面下に相当数の新型コロナ感染者が存在すると考えられる、として、札幌市の下水サーベイランス(下水疫学調査)のデータを参照している。それによると。同市では、第7、8波の水準に迫る勢いでコロナウイルス排出量が増えているという。
札幌市は全国の自治体の中でも、下水サーベイランスの取り組みが進んでいることで知られている。同市によると、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染者は、症状の有無にかかわらず、糞便や唾液中にウイルスRNAを排出する。
そのため、下水中のウイルスを検査・監視する下水サーベイランスを実施すると、受診行動や検査数などの影響を受けることなく、無症状感染者を含めた感染状況を知ることができる。
この調査によると、5類移行後、札幌市では新規感染者数は低レベルにとどまっているにもかかわらず、下水中のコロナウイルスRNA濃度は急増している。過去のコロナ流行時には、感染者数と下水データは、概ね同じ増減傾向を示していた。5類移行後は大きなずれが生じている。