「冷やしカレーはじめました」 ルーの下にはひんやり「酢飯」
夏が、来た。金沢カレーで知られる「チャンピオンカレー」(石川県野々市市)は、2023年7月3日から「冷やしカレー」を23店舗で発売する。冷やし中華の間違いじゃないかって?いや、本当にルーからライスまで冷たく仕上がったカレーを提供するらしいのだ。
「カレーは熱くてなんぼちゃいますの!?」――。血走った目でこう叫ぶのは、カレー原理主義者ことJ太青年。自宅では市販のルーを使わずスパイスでカレーを作ることもある僕だが、冷たいカレーを食べた経験は、人生で一度もない。とはいえ、新たな香辛料の世界に対する知的好奇心が湧いてくる。チャンピオンカレーが開いた試食会へ足を運んだ。
具材は小ぶりなトマトや蒸し鶏
もちろん普通のカレーを放置すればそのままおいしい冷やしカレーになる、なんてことはない。固形ルーや豚肉を使った家庭のカレーが冷えると、冷えた脂肪や小麦粉が固まってざらざらするなど、奇妙な食感に変化するのが普通だろう。では、いかにおいしく冷えたカレーを作るのか?そこが今回のJ太的キーポイントだ。
試食会場にて、テーブル上の資料に目を通す。
「冷やし中華はじめました」のノリで
J太「へえ『キリっとした辛さが特徴の未体験のカレー』か。カレーに合わせるライスは酢飯ねえ。...酢飯だと!?」
冷たいカレーというだけで未知なのに、「酢飯」。カレー原理主義者の常識はたやすく覆され、脳がぐわんぐわんと揺れた感覚に。放心中のJ太の元に、試食品の「冷やしカレー」が運ばれてきた。
金沢カレーらしいステンレス製の皿。しかしカレーの上に乗るのは定番のトンカツではない。ダイスカットされたトマト、蒸し鶏、ヤングコーン、そしてネギと、見た目からしてさっぱりとした涼しげな面々だ。ステンレス皿の底は、冷たい。冷気で結露しているのではないかと触ってみるが、さすがに濡れてはいなかった。実食といこう。
辛くて冷たい
トマト、蒸し鶏、ネギとともにいただきます
J太「え、辛っ、いや冷っ...いやうまっ!」
新感覚すぎて、うまく言語化できない。キレの強い辛味が舌に走り、一瞬熱いかと錯覚するが、やっぱり温度は冷たい。どこか甘味もある。トマトと合わせて食べるとフルーティな酸味が加わり、口の中は味覚の楽園状態だ。匂い立つ湯気がないぶん香りは弱いかと思いきや、しっかりとしたスパイスの刺激感。食べ進めるうち、水が欲しくなる程度には辛い。
先述通り、カレーを冷やすと食感が悪くなり得る。かといって油や小麦粉を一切使わなければ、水っぽくシャバシャバになるだろう。この冷やしカレーが恐ろしいのは、カレーライスらしいなめらかなルーの食感を低温で維持している点だ。
J太「シェ、シェフを!シェフを呼んでくれ!」
気分は、料理漫画の主人公が出した料理のおいしさにうろたえる大富豪。
本当に酢飯なの?と食べてみる
冷やしカレーの開発を担当した、チャンピオンカレーの福田諒一さんに取材した。もともと同社のカレーでは、ラードと小麦粉を使用している。ただ、冷やしカレーでは「ラードの使用量を極端に減らした」という。
開発担当の福田諒一さん 冷やしカレーの秘密を教えてくれた
また小麦粉の代わりに、トウモロコシ由来の原料であるコーンスターチを使用。こうした工夫により冷たくてもダマにはならず、一方で水っぽくサラサラにもなりづらいとのことだ。
ただ火入れの浅さや温度の低さにより味にコクが出づらいと話す。対策として、酢飯との相性のいい和だしや豆乳を取り入れている。なお火入れが弱いとスパイスのとげとげしさが失われづらいため、普段のスパイスより辛く感じる可能性があるとのことだ。強めな辛味の正体は、これかも。
酢飯を採用したのは、冷たい食品に合うのでは、との考えからだ。でも、僕が食べたときには正直、全然酢っぽさが感じられなかった。酢飯とカレーの組み合わせに、想像していたような違和感が全くなかったのだ。「本当に酢飯を使っているの?」と邪推するJ太。そこで、福田さんに無理を言ってみる。
J太「...シャリだけ食べることはできますか?」
福田さん「あ、できますよ」
シャリだけをいただく
ご快諾、ありがとうございます。目の前に、シャリ入りの小皿が置かれる。口にしたその瞬間、富士山だとか浮世絵だとか刺身だとか、そういった抽象的な「和」が頭の中を走る。
J太「あ、酢飯ですね」
福田さん「はい。何の変哲もない酢飯です」
甘味と酸味と出汁の風味。シャリそのものだ。酢飯と聞けば和風の味わいになるとイメージしがちだが、カレーと合わせて食べると、意外と和のテイストは薄れるとのことだ。
冷やしカレーは石川県や東京都、京都府など、1都1道1府7県の23店舗で取り扱う。数量限定で7月3日の発売以降、在庫がなくなり次第終了だ。価格は1000円(税込)。
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