女子大に「工学部」続々誕生 共学の理系大学には「女子枠」も

   有名女子大で「工学部」を新設する動きが目立っている。一方で、共学の理系大学の中には、合格枠に「女子」を増やすところも相次いでいる。IT社会の進化で、エンジニア系の人材が不足していることもあり、受験戦線では優秀な女子の争奪戦が始まっている。

理工系の女子が争奪戦に
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女性エンジニアが不足

   いち早く動いたのは奈良女子大だ。22年4月に工学部を女子大で初めて開設した。国立の女子大は、同校とお茶の水女子大学の2校だけ。全国に多数ある女子大の中でも屈指の伝統を誇る。ウェブサイトで以下のように開設理由が説明されている。

「情報化社会の特色の一つは、AIを初めとするソフトウエアが工学に深く関与し始めたことです。20世紀までの力の工学が、知の工学に変化したことで、知のバランスが必要になり女性エンジニアの不足が問題になっています」
「このアンバランスを正して世界を変える、多様な視点からの意見に耳を傾け、持続可能な社会を作ることのできる、そんな女性エンジニアを育てるために、奈良女子大学工学部は『人と社会の必要性を考えるリベラルアーツ教育』、『創造性と理工系知識を学ぶSTEAM教育』、『そして多様な人々と交流する力を育てるPBL演習』をカリキュラムの中心にしました」

   ⼯学部設置に先立ち、19年11⽉に企業へのニーズ調査を実施した。対象とした172企業のうち161企業(94%)から、奈良⼥⼦⼤の⼯学部で学んだ卒業⽣を採⽤したい(334人枠)という回答があったという。

お茶の水女子大学には共創工学部

   もう一つの国立女子大、お茶の水女子大学も、2024年4月には共創工学部を新設する。ウェブサイトによると、学部の名前には「工学と人文学・社会科学の知が協働し、共に未来の環境、社会、文化を創る」という意味が込められているという。「人間環境工学科」と「文化情報工学科」という2つの学科が設けられる。

   私立の女子大では、日本女子大が建築デザイン学部(仮称)を24年4月に開設する予定だ。ウェブサイトで、「国内外の生活環境を歴史、地域、芸術、技術、持続可能性、その他社会の潮流などの側面から論理的に考え理解することができ、その知識に基づいて豊かな生活環境を創造性と表現?を持ってデザインすることができる人材を育成します」と説明している。

文科省が後押し

   一方、共学の理系大学でも「女子獲得」の動きが強まっている。

   芝浦工業大学は2018年度入試から、特に女子学生が少ない工学部機械電気系4学科に「公募制推薦入学者選抜(女子)」枠を設けた。22年度入試から工学部全9学科へ、その後さらに全学拡大した。

   名古屋大工学部は、23年度入学の学校推薦型選抜で、募集定員の半数を女子にした。東京工業大も、24年度入試から「女子枠」を設ける。東京理科大も、女子受験生に限定した総合型選抜を24年度入学生向けの入試から新たに始める。工学系の3学部16学科で計48人の枠を設けるという。

   読売新聞によると、文部科学省は、理工系分野に「女子枠」を創設するよう各大学などに促している。理工系専攻の女子学生が少ない現状を変えたいとの考えによる。 女子大の新設工学部に行くか、女子枠ができた共学の理系を目指すか、優秀な女子受験生にとっては選択肢が増えることになりそうだ。

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