VR空間で「学園ドラマ」制作 細田守監督がメタバースネイティブの発想に...
高校生がメタバースを使ってドラマ作品を作る――。そんな教育プログラム「メタバース学園ドラマ制作プロジェクト~未来の学校生活をVR空間で描く~」が、角川ドワンゴ学園の通信制高校のN高校、S高校で始動している。
特別講師として、アニメーション映画「サマーウォーズ」などで知られる細田守監督をはじめ、「バーチャル建築家」番匠カンナ氏、そして作家や俳優として活躍する山田由梨氏が協力。2023年6月1日に、両校生徒や細田氏らが顔を合わせて意見交換するキックオフイベントを開催した。
「バーチャル学習」慣れ親しんだ生徒たち
角川ドワンゴ学園がFacebook Japanと連携し展開する次世代XRクリエイター向け教育プログラム「Immersive Learning Academy」の一環。同プログラムでは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術を身につける機会を提供している。
もともとN高・S高では2021年4月から「バーチャル学習」を導入。メタバース内での授業や、アバターを活用したスポーツやゲームといった交流イベントを実施している。「普通科」の選択生徒にはVRヘッドセット「Meta Quest 2」を配布しており、7000人以上の生徒が保有する。
「メタバース学園ドラマ制作プロジェクト」では、VR空間の中で生徒が未来の学園生活を描いた約5分間のドラマを作る。3D制作スキルを学ぶとともに、VRのような「没入型」テクノロジーの教育分野における可能性について模索する。生徒たちが体験を通してメタバースや自身の未来を想像し、次の目標を見つけるのがゴールだ。
100人以上の応募の中から選ばれた20人が、4つの「制作会社」(チーム)に分かれ、脚本に演出、VR美術、編集など、それぞれの役割を担ってドラマ制作にのぞむ。映像撮影にはQuest2を使い、ワールド制作にはメタバースプラットフォーム「cluster」を使う。
細田氏「面白い時代」
キックオフイベントに遠隔で登壇した細田守氏は、自身でも仮想空間を舞台にした作品を手がけてきた。映画の中にとどまらず、現実でメタバースが浸透している状況に「すごく面白い時代になっている」と語る。普段からVRの中で学校生活を送る生徒が、ドラマ制作に自身の体験をどのように生かすかが「見たい」と興味深げだ。
イベントの第2部は「キックオフセッション」。ドラマを製作するN高・S高の計4チームが、それぞれのドラマの企画案を発表した。すでに5月にプレワークとしてドラマ題材のコンセプト設計を実施している。
例えば「Diversity」というチームの企画。まずは、放課後の教室で「オーロラ」に触れた人が「AI」(人工知能)になってしまう作品。次に、VR内で夏祭りに行っていたら友人が神隠しにあってしまう話。そして、メタバース上の東京で遊んでいた高校生が帰り道にある裏通りで異世界につながる「バグ」を発見するストーリー、という3案だ。
細田氏は「3つとも面白い」とコメント。ホラーとデジタル、人とAIという対比を組み合わせたコンセプトを「示唆的」と評価する。また「バグ」そのものは現実世界にも存在するとした上で「バーチャルはバグだらけ。すごく冒険しがいのある世界というところを突っついて、面白くしてほしい」とコメント。3案のコンセプトを全て合わせてもいいのではないかと語った。
今後は6月にかけてワールド制作や中間フィードバックを行い、7月~8月に撮影、編集を実施。9月での完成やお披露目を目指す。