学生ゲームクリエイター「就活」の意外な決断 企業所属か独立か、どうする
【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第22回のゲストは、学生インディーゲームクリエイターのマチコーさん。テーマは「学生ゲームクリエイター『就活』の意外な決断 本当にやりたいことを見極める」だ。スペースアーカイブはこちらから。
2年半かけたゲーム作りを「断念」
ゲーム業界を目指し、地元・佐賀から上京したマチコーさん。「大学のうちに、ゲームを作って売るところまで行くなら、チームでやるしかない。一人ではできない」と考え、大学一年生の時、仲間と共にインディーゲーム(「インディペンデント・ゲーム」の略称。個人や小規模な組織で制作するゲーム)スタジオ「SUPER STARMINE」を立ち上げた。
現在は大学四年生で、これまでに数々のインターンシップを経験。「ゲームクリエイターズギルドEXPO 2019」で最優秀賞を受賞するなど、コンテスト・コンペ出場実績も豊富だ。精力的に活動したからこそ、大きな失敗も味わっている。2年半かけたカジュアルゲームの制作を、断念したのだ。行き詰った理由は、大きく分けて2つある。詳細はスペースにて(17:34~)。
しかしマチコーさんは、ゲーム作りそのものまでは断念せず、思い切って方針転換。最大4人で対戦できる弾幕シューティング「マジカオス」を構想した。これらの出来事から、マチコーさんは「ゲーム業界に進みたいクリエイターに、『まずは手を動かしてゲームを作ってみる』こと」を強く勧める。「やってみたい」と思うだけでは、何の経験値も得られないからだ。山下さんも「トライアンドエラーは大事」と同意する。
「クリエイティブ全般に言えることですね。理論はわかっていて、知識はあっても、実際やってみなきゃわからないトラブルって、たくさん出てきますから」(山下さん)
「マジカオス」は、廈門国際アニメフェスティバル最優秀ゲーム賞ノミネート、「第15回GAME3」優勝などを果たしている/(c) 2019 SUPER STARMINE
「個人でやっていくことの最大級のデメリット」とは
マチコーさんは大学卒業後の進路について、「企業への就職」か「独立」かで悩んだ時期があった。
クリエイターとしての実績があり、スタジオ代表としてチームを束ねてきた。手塩にかけた作品は高い評価を受けている。ゲーム会社での運用プロジェクト・新規開発プロジェクトの企画業務をこなし、成功も失敗も知っている。経歴を見れば「独立」か......と思いきや、選んだのは「就職」。現在は、入社が決まった企業で、内定者バイトとして働いている。なぜなのか(33:02~)。
マチコーさん「まずは就職し、人脈や稼ぐ方法といったノウハウを身に着けたいなと。学生のうちに売れっ子ゲーム作家になっている人なら、独立した方がいいとは思いますが......」
山下さん「自分も今はフリーですが、かつて会社に所属していて、その時の経験は生きていますね。金銭感覚や社会人としての作法、あとは『捨てる技術』!」
「捨てる技術」とは、時間と金の制限がある中で、思い通りにならない事態に直面した時、「ここは譲れないが、あとは諦めた方がいい」と切り替える力を指すという。他にも二人は、企業に勤めるメリットをいくつか挙げた。同時に、山下さんは「個人でやっていくことの最大級のデメリット」も暴露。その内容とは(44:49~)。
スペース終了後の二人に「印象に残った話」を聞くと、マチコーさんも山下さんも「企業所属とフリー(個人)の違いについて」を挙げた。
山下さん「フリーで働くものとして共感できることもあれば、ゲーム制作ならではのデメリットもあったりして、とてもタメになる時間を過ごせました」
マチコーさん「その話題をきっかけとして『なぜ自分はゲーム会社へ新卒入社する道を選んだのか』を改めて振り返り、自分の現在地を確認することにも繋がりました」
マチコーさんは、リスナーにとっても「自身のキャリアについて考える契機にしてもらえたら幸い」と話す。「良いゲームを作りたい若手ゲームクリエイターのための共創型コミュニティづくり」に注力し、周囲への支援にも心を砕いているからだ。
その名も「レベラボ - LEVEL UP! Lab」。作品の売り方、認知度の上げ方、資金調達の仕方などを学び、議論を通じて「面白いゲームとは何なのか」を考えるきっかけを作りたいと語る。世界へ羽ばたくインディーゲームが生まれるよう、まずは作り手の知識や制作環境が豊かであれ、との思いがあるようだ。
第23回作リエは、2023年6月7日実施予定。