コロナ5類「後遺症対策」大きな課題に 予防法も治療法も確立していない

   新型コロナウイルス感染症が、2023年5月8日からインフルエンザと同じ「5類」の扱いとなった。しかし、インフルエンザとコロナとでは、大きな違いがある。死亡・重症化のリスクはコロナがインフルエンザよりも高い。そして、もっとも心配なのが「後遺症」だ。

「けん怠感とだるさ」長期間続く(写真と本文は関係ありません)
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「けん怠感とだるさ」長期間続く

   「後遺症があることが新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの大きな違い」――5月1日のNHKニュースで、愛知医科大学メディカルセンターの馬場研二医師は、後遺症の怖さを訴えた。

   馬場医師は、2年前から後遺症の症状を訴える患者の診療にあたってきた。これまでに対応した1009人の症状などを分析したところ、最も多かった症状は、「けん怠感とだるさ」だった。オミクロン株に感染した患者の半数以上が訴えていた。

   後遺症と診断された人の年齢層は20代から50代までが多い。ほとんどの人はコロナに感染した当初の症状は「軽症」だったという。

   後遺症から回復までの期間は、オミクロン株の患者の場合、半数以上が「5か月以上」。中には1年以上、苦しむ人もいた。乗り物に酔うようになったり、記憶の障害に悩んだりするなど、日常生活に影響が出るケースも少なくないという。

   NHKは、「今までに経験したことがないほど強烈なけん怠感」「立っていることができない」「学校にも行けない」「職場でも理解されない」など、後遺症に悩む人達の不安と苛立ちを伝えていた。

回復した後に新たな症状も

   感染症専門医の忽那賢志大阪大学医学部教授も、「Yahoo!個人」で4月8日、「5類感染症になっても、新型コロナがインフルエンザと同等の疾患とは決して言えない理由の一つにコロナ後遺症の問題があります」と、「後遺症」について警告している。

   忽那教授によると、コロナ後遺症とは、新型コロナに感染してから2か月以上経った後も咳など発症時からある症状が続いたり、回復した後に新たに脱毛などの症状が現れてきたりする病態を指す。頻度が高い症状としては「だるさ」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などがある。

   忽那教授によると、コロナ後遺症の予防法や治療法は確立されていない。今のところ、「ワクチンの接種と、感染後の急性期における抗ウイルス薬の投与がコロナ後遺症の予防に有効というエビデンスが集まりつつあります」という段階だという。

子どもでも約4%が悩む

   共同通信は5月2日、コロナに感染した子どもの後遺症について報じた。日本小児科学会の研究チームによると、国内で新型コロナウイルスに感染した子どものうち、発症から1か月以上たっても続く後遺症がある割合は3.9%だった。症状は発熱やせき、嗅覚障害、けん怠感などが目立ち、入院したり、学校や保育園などを休んだりしたケースもあった。

   調査は2020年2月から23年の4月11日までに、学会のデータベースに小児科医らから任意で寄せられた0~15歳を中心とした20歳未満の感染者4606人の情報を分析したもの。子どもの後遺症に関して、国内でまとまった数のデータが判明するのは初めてだという。大人に比べると少ないが、子どもも一定の割合で後遺症に悩んでいる実態が分かった。

   共同通信は、コロナの法的な扱いが5類に引き下げられても、「後遺症の治療、相談体制の整備は今後も課題となる」としている。

   WHO(世界保健機関)は5月5日、新型コロナウイルスに関する「緊急事態」の終了を宣言した。しかし、今後も新たな変異株の出現は懸念され、死者の増加をもたらすリスクは残るとしている。WHOの集計では、5月3日時点で、世界で約7億6500万人が感染し、692万人以上が死亡した。

   国内では約3380万人が感染し、約7万4000人が死亡した。

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