宅配便の無料再配達なくなる? トラック「2024年問題」の危機迫る

   宅配便の「再配達」が問題になっている。社会的に無駄なコストを生み出しているからだ。国土交通省は2023年4月を再配達削減月間とし、さまざまな取り組みをしてきた。再配達が削減されない状況が続くと、近い将来、有料化が浮上することにもなりかねない。

宅配便の「再配達」に影響が
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1割強が再配達

   国交省によると、2008年度は約32.1億個だった宅配便の取扱個数は、21年度には約49.5億個。5割以上も増えた。一方で、2022年10月期のサンプル調査では、約11.8%が再配達になっている。この数年、大体同じような割合だ。

   全体の約1割にのぼる再配達を労働力に換算すると、年間約6万人のドライバーの労働力に相当するという。

   また、再配達のトラックから排出されるCO2の量は、年間でおよそ25.4万トン(2020年度国交省試算)。地球環境に対しても負荷を与えている。

   このため、同省は経済産業省と協力して今月、再配達削減を目指して、以下の3点を「お願い」を各方面にアピールしてきた。

・時間帯指定の活用
・各事業者の提供しているコミュニケーション・ツール等(メール・アプリ等)の活用
・コンビニ受取や駅の宅配ロッカー、置き配など、多様な受取方法の活用

トラックドライバーは長時間労働

   両省が、再配達の削減に強く取り組んでいる背景には、運送業界の「2024年問題」がある。

   朝日新聞によると、トラックドライバーは他の産業より年間の労働時間が2割長く、所得は1割低い。ようやく規制がかかり、24年4月から残業時間の上限は年960時間となる。

   働き方の改善につながる一方、これまで運転手の長時間労働に頼ってきた輸送は変わらざるを得ない。これが2024年問題だ。何も対策をとらなければ輸送能力は24年度に14%、30年度には34%不足するとの試算もある。

   結果として、物流が滞ることが懸念されており、そうなると日本経済全体にとって大きな打撃となる。

   こうした事態を避けるには、無駄な輸送や配達を減らす必要がある。宅配業界の無料再配達は、無駄な輸送の典型とみられ、対策の強化が急務となっている。

すでに有料の再配達も

   同省の調査では、宅配品を受け取る側は、多くはおおむね1回で受け取っている。しかし、一部の人が何回も再配達を繰り返すことで、全体の再配達率を上げる傾向がある。

   ヤマト運輸や佐川急便は今年4月、諸経費の高騰を理由に配達料金を値上げした。これは、形式的には、再配達で生じる過剰なコストの一部を、一回できちんと受け取っている人たちが払わされている格好にもなっている。

   NHKによると、配達業務は荷物1個当たりで単価が決まっているため、再配達で負担が増えても会社やドライバーの収入が増えるわけではない。

   しかし、物流業界では、すでに青果物を中心とした食料品配達スーパーや、家具配達などでは「再配達料」を徴収しているところがある。

   自民党の調査会は4月26日、再配達を削減するために、1回の配達で荷物を受け取ることを促す取り組みの導入について検討すべきだ、とする提言案を公表している。このまま事態が改善しないと、宅配便の再配達は、有料化すべきではないかという議論が強まってくる可能性もありそうだ。

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