「ChatGPT」に世界各地で警戒感 日本では学校での取り扱い議論

   人工知能(AI)が質問に答えるサービス「Chat(チャット)GPT」が、波紋を広げている。伊では政府が利用を一時使用禁止、米国では自動車メーカー、テスラのCEOなどを務めるイーロン・マスク氏やAI専門家が「より強力な」システムの開発を直ちに停止すべきだと主張。バイデン大統領も、法整備の必要性を訴えている。

学校でのChatGPTの取り扱いが検討される(写真と本文は関係ありません)
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国会質問も作成

   ChatGPTは、米のベンチャー企業、オープンAI社が開発した対話式AIだ。2022年11月に無料公開され、日本でも最近、急速に利用が広まっている。沖縄タイムスによると、23年3月23日には琉球大学の卒業式で、卒業生代表の一人がChatGPTを使って生成した答辞を読み上げた。答辞の初稿は、AIがわずか数分で書き上げたものだったという。

   同29日には国会質問にも登場した。朝日新聞によると、立憲民主党の中谷一馬議員は事前に「法律案に関して、首相にどんなことを質問すべきだと考えていますか」とChatGPTに尋ね、得られた質問をそのまま読み上げた。質問は「20秒ほどであっという間に」(中谷氏)できたという。そして、AIで事前に生成した首相答弁案までパネルで示した。

   国会論議のように、同じような問題についての質疑が繰り返されるケースでは、特にAIによる学習に基づいた質問や回答案が作成しやすい。

イーロン・マスクvsビル・ゲイツ

   一方、海外ではこのところ、ChatGPTに対する警戒感も強まっている。NHKによると、伊のデータ保護を担当する当局は、ChatGPTの使用を一時的に禁止することを決めた。個人情報の保護に関する伊の法律に違反している疑いがあるためだ。使用が禁止されるのは欧米では伊が初めてだという。

   また、ロイターによると、米の電気自動車メーカー、テスラのCEO、イーロン・マスク氏と1000人以上のAI専門家は公開書簡で、ChatGPTの最新版言語モデル「GPT-4」に言及し、これを上回る「より強力な」システムの開発を直ちに停止するように呼びかけた。社会に及ぼし得るリスクと恩恵を精査すべきだと主張している。

   これに対して、米マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏は4月3日、ロイターのインタビューで、強力な人工知能(AI)の開発停止を求めるイーロン・マスク氏らの公開書簡について、問題解決にはならないとの見解を示した。世界中で開発を停止するのは難しいとし、AI開発の最善の利用法に集中する方が得策だとした。

学習への影響を懸念する声

   米ではバイデン大統領も、動き出している。テレビ東京によると、大統領は4月4日、ChatGPTなどの高性能なAIについて、利用者の安全を脅かす恐れがあるとして、個人情報を保護する法整備の必要性を訴えた。個人データや企業機密の収集などのリスクが指摘されているためだ。「IT企業は製品を公開する前に安全性を確認する責任がある」と強調し、その上で、「議会は企業の個人データ収集に厳しい制限を課す法案を可決する必要がある」と訴えた。

   NHKによると、日本でも文部科学省が、学校現場での取り扱いを示す資料を作成する方針だ。ChatGPT を使うと、AIに質問するだけで自然で説得力のある回答が返ってくるので、読書感想文やリポートなども簡単に作成できてしまい、学習への影響を懸念する声もある。文科省は今後、国内外の事例を集め、専門家の意見も聞いたうえで、なるべく早く作成したいとしている。近い将来、この資料づくりも、ChatGPTなら簡単にできるようになるかもしれない。

   TBSによると、岸田首相は4月10日、総理官邸で「ChatGPT」を開発したオープンAI社アルトマンCEOと面会した。G7の首脳としては初めてだという。

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