子育て支援は地方が国に先行 「所得制限なしで給付」も目立つ

   地方自治体が「子育て支援」の取り組みを強めている。出産や入学の祝い金、保育料の無償化など様々だが、所得制限なしに、「直接給付」を決めているところが目立つ。岸田文雄首相も少子化対策、子育て支援に力を入れることを表明しているが、まだ具体案が煮詰まっていない。地方自治体が、国に先行する形となっている。

子育て支援の財源はどこに
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自治体の「アピール合戦」に

   日経新聞は23年2月16日、「東京23区、子育て支援競う」という記事で東京都内の取り組みをまとめている。さらに朝日新聞は17日、「子育て給付金、アピール合戦」と、全国の状況を報告している。

・「入学祝い金として小1に5万円、中1に10万円」(東京都新宿区)
・「18歳以下に月5000円、第2子の保育料を無償化」(東京都)
・「小中入学時に5万円分の地域通貨ポイント」(徳島県美馬市)
・「18歳未満に3万円分の電子商品券」(岐阜県関市)
・「出産前に3万円の助成金」(宇都宮市)

   以上のような支援策があちこちの自治体で打ち出されている。特に新宿区の入学祝い金は額も大きい。朝日新聞は「公立私立は問わない。これは結構、珍しいと思います」という吉田健一区長のコメントを掲載している。

   同紙によると、都内23区の23年度予算案では、半数ほどの区が「現金給付」を盛り込んでいるという。

6年間で3600万円の奨学金

   日経新聞の記事で注目を集めたのは、東京都足立区の取り組みだ。23年度から、これまで貸与型だった大学生向けの奨学金を給付型に切り替えるという。家計負担の大きい進学費用を支援するのが狙いだ。世帯年収800万円以下(4人世帯の場合)が対象で、募集枠は40人。

   とりわけ、私立大医学部に進学した場合、6年間で最大3600万円が給付される、というのが目を引く。財源には区民や企業からの寄付金や特別区競馬組合からの分配金などを充てるという。同紙の取材に、近藤弥生区長は「医者になりたい、理系に進学したいという子どもの夢が実現できる自治体を目指したい」と語っている。

   東京都はすでに、東京都立大(八王子市)の授業料無償化の対象者を、2024年度から拡大。これまでの「世帯年収478万円未満」から「同910万円未満」にする方針を明らかにしているが、足立区は医学部進学者について、さらに手厚くなる。

国はまだ「たたき台」の議論

   子育て予算の拡充で心配なのは、財源だ。東京都や23区など、財源にゆとりがあるところではやりやすいが、やりたくてもできない自治体も多い。その場合、自治体間の格差が広がることにつながる。

   また、はっきりした財源の目当てがないにもかかわらず、今春の統一地方選挙の前に、有権者が喜びそうな目玉政策を掲げる、というケースもあるようだ。

   日経新聞は、「選挙が近づくとばらまきをやりたがるが、目先の受け狙いでやられるのは困る」と苦言を呈する区長もいることを紹介。求められるのはばらまきではなく、将来の子育てに希望が持てるような効果的な少子化対策だ、と強調している。

   岸田首相は「異次元の少子化対策」を表明済みだが、朝日新聞によると、現在はまだ「たたき台」を関係省庁で議論しているところ。その後、財源確保策を議論し、6月末までにまとめて具体策の道筋を示す方針だという。

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