多摩動物公園のタスマニアデビル死ぬ 国内飼育は残り1頭しかいない
オーストラリアに生息する絶滅危惧種「タスマニアデビル」。日本国内では「多摩動物公園」(東京都日野市)でのみ飼育されているが、2023年1月2日にオスの「ダーウェント」が死亡した。
都建設局と東京動物園協会の1月6日付発表によれば、国内の飼育状況としては、ダーウェントを除いてオス1頭のみとなっている。
多摩動物公園で20年ぶりに
発表によると、現在はオーストラリアのタスマニア島のみに分布。以前は家畜を襲う害獣としての疑いにより駆除対象となり個体数を減らしていた。その後、保護法により少しずつ生息数が回復したが、伝染性や致死率の高い「タスマニアデビル顔面腫瘍病(DFTD)」という病気の影響で再びその数が減少しているという。
都立動物園・水族園の公式サイト「東京ズーネット」内の2016年6月24日付記事によると、同園では同月11日に初めてタスマニアデビルのメス2頭「マルジューナ」と「メイディーナ」を公開した。
日本の動物園でのタスマニアデビルの公開は、1984年の大阪市の天王寺動物園が初。1988年には札幌市の円山動物園でも公開したが、それぞれ1991年と1996年に展示が終了した。多摩動物公園は3園目で、国内でおよそ20年ぶりの公開だったという。
同サイトによると、2017年11月7日には新たにオス2頭「テイマー」とダーウェントが来園。しかし17年12月9日にマルジューナが、2019年2月7日にメイディーナが死亡。今回のダーウェントの死により、テイマーだけが残っているとみられる。
キーウィにラッコの数は
日本国内で、ある種類の動物がわずかな数だけ飼育されている事例は他にもいくつかある
例えばニュージーランドに生息する鳥「キーウィ」。子ども向けの環境情報紙「エコチル」公式サイトでは、天王寺動物園が協力・監修した記事が22年7月4日に掲載されている。それによると、日本国内においてキーウィは天王寺動物園でのみ、2羽が飼育されている。
J-CASTトレンドの22年10月23日付記事では、ラッコの飼育数について伝えている。ピーク時には国内の飼育数が120頭を超えていたとされるが、記事時点では残り3頭のみとなった。2頭は鳥羽水族館(三重県鳥羽市)に、もう1頭は「マリンワールド海の中道」(福岡市)にいる。取材に応じた「マリンワールド海の中道」のラッコ担当者によると、ラッコは健康管理が難しく、また飼育個体の高齢化が進んでおり、繁殖には手が出しにくいとの話だった。
日本平動物園(静岡市)。2022年4月13日付東京新聞(電子版)によると、ここは日本で「ヒゲワシ」という鳥を飼育している唯一の動物園だ。同園公式サイトによると、一般的にはチベット、インド、アフリカ、南欧州の高山に生息する。欧州や北アフリカではその数を減らしており、貴重な鳥なのだという。
22年4月27日付山陽新聞(電子版)では、国内唯一の「ボルネオゾウ」である「ふく」という個体について伝えている。広島県の福山市立動物園で飼育されているメスのゾウだ。園公式サイトによると、ボルネオゾウはマレーシアのボルネオ島北東部のみに生息。野生では1600頭~2000頭が生息するといわれている。
国内でのタスマニアデビルの数が少ない理由や今後増える見込みについて、J-CASTトレンドでは多摩動物公園に取材を申し込んでいる。回答があれば後日追記する。
(2023年1月12日19時33分追記)多摩動物公園の教育普及係から回答があったため、追記いたします。
オーストラリアでは、2013年より、野生に放す予定のない個体を海外の動物園に送り、タスマニアデビルの危機的状況について周知を行う「教育普及プログラム」が実施されている。多摩動物公園もこのプログラムに参加し、タスマニアデビルの提供を受けている。
多摩動物公園の教育普及係によると、提供される個体数はプログラムによって定められているのだという。
プログラムの方針により「今後も繁殖の予定はありません」。今後、新しくタスマニアデビルが多摩動物公園にやって来る可能性はあるものの、現時点では決まっていないとした。