サッカーW杯「出ていない」中国なぜか熱狂 健闘の日本代表に称賛も

   サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本代表はPK戦の末に初のベスト8を逃したが、2002年の日韓大会、10年の南アフリカ大会、18年のロシア大会に続く4回目の決勝トーナメント進出を果たした。

   2002年を最後に自国代表がW杯に出場できていない中国では、日本代表が健闘する度に「日本にあって中国にないもの」を巡って国民的議論が巻き起こる。

クロアチアにはPK戦で敗れたが、欧州の強豪を相手に日本代表は堂々の戦いぶりだった(写真:新華社/アフロ)
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金満クラブチームは生まれたが

   決勝進出を決めたスペイン戦は深夜(中国では午前3時に試合開始)開催だったにもかかわらず、SNSのウェイボ(微博)では「日本VSスペイン」「日本2-1スペインを逆転」「日本が3分間に2ゴール」「日本が16強進出」「森保一監督への評価が一変」などのワードが次々にトレンド入りし、日本代表への称賛やスペインによる八百長説など膨大なコメントが飛び交った。

   中国のサッカー熱は日本以上だ。サッカー好きで知られる習近平氏が国家主席に就任した2010年代前半には、当時イケイケだった不動産企業がクラブチームを保有し、欧州や南米の著名選手、指導者を"爆買い"して強化した。巨大債務を抱えて経営危機にある恒大集団の「広州恒大」はその代表格で、2013年、15年にアジアNo.1を決めるAFCチャンピオンズリーグで優勝した。

   だが、中国代表はW杯に出場できるほどには強くならず、国民のフラストレーションの種になっている。1998年のフランス大会でW杯初出場を果たした日本が地道に力をつけ、2大会に1回は決勝トーナメントに進む活躍を見せると、「身体能力の違う欧州や南米の選手を真似るより、日本チームを研究すべきだ」との声が大きくなった。チームワークや機動力で戦う日本の戦術を取り入れるため、日本代表の元監督である岡田武史氏を筆頭に、中国のクラブチームの監督に招聘された監督も複数いる。

「アジアの代表チーム」と応援

   今大会で日本はドイツ、スペインと同組に入り予選突破は難しいと見られてきたが、その2代表を破りグループリーグを首位で通過した。首位通過は2002年以来20年ぶり2度目だが、自国開催だった当時とは当たった相手の格が全く違い、紛れもなく「番狂わせ」だ。中国のSNSでは「スペインが(決勝トーナメントのことを考えて)2位で突破するために八百長したのではないか」と疑念が湧き上がる一方、「日本のサッカーを研究し、中国の足りない部分を知るべきだ」「日本と中国の差は1世紀分に開いた」との投稿もあふれた。

   「日本はドイツを模倣し続け、ついに追い抜いた」との投稿には「日本が学んだのはブラジルサッカーのはずだ」など、"源流"を巡って議論が沸騰した。

   中国代表の体たらくもあり、全体としては日本を「アジアの代表チーム」として応援する投稿が多く、「アフリカや欧米の選手に劣らないと証明してほしい」「4強を期待する」と望む声もあった。

   試合が進むにつれ日本代表メンバーの知名度も上がり、6日未明に行われたクロアチア戦では、「森保一監督がまたメモを取る」もトレンド入り。日本が敗退すると、「森保監督は、日本に帰ってPKの練習をする」とメモしただろうとの投稿も増えた。

【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37

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