スペイン撃破を呼んだ選手へのぶれない信頼 劣勢でも森保監督は笑顔だった
【連載】サッカー・カタールW杯 森保ジャパン勝負の1年
決勝トーナメントに進むためには、勝たないといけない。運命のスペイン戦(現地時間2022年12月1日)は前半11分、相手に先制された。
データ的にも圧倒されているなか、36分にカメラがベンチにいる森保一監督を映した。0-1にもかかわらず、笑顔あふれる、余裕さえ感じる表情だった。
ロシアW杯、東京五輪の経験
そんな森保監督を見ながら、筆者は2010年の南アフリカW杯を思い出した。
初戦のカメルーン戦に1-0と勝利したのを記者席で見届けた後、会見場に向かい、岡田武史監督に質問した。
「(試合前の選手間の確認や試合中のポジション変更など)なにが選手たちに自主性をもたらしたのか」
岡田監督は歴史、経験が生きたといったニュアンスで、
「選手たちが、自分で変わらなければいけないという気持ちになったのではないかと思います」
と教えてくれた。
これは選手だけでなく、監督も同じではないだろうか。
森保監督には、2018年のロシアW杯で、コーチとしてグループリーグを突破した経験がある。また昨年の東京五輪では、監督として敗れたものの、銅メダル決定戦を戦っている。その経験が、大一番となったスペイン戦で実を結んだのだと思う。
三笘薫のリズム作った谷口彰悟
ドイツ戦、コスタリカ戦と続いた4バックのスタートではなく、3バックへの変更。それに伴い、W杯初出場で初先発となる谷口彰悟の抜擢。後半開始直後、谷口から三笘薫への2本のパスは、三笘のリズム作りに寄与しただろう。
コスタリカ戦ではなかなか生きなかった堂安律や吉田麻也にも、変わらぬ信頼を与えた。本連載を読み返せば見えてくる、たとえば「ラージグループ重視」など「ぶれない」森保監督は、この窮地でも動じなかった。
次は、日本史上初となるベスト8進出を賭けたクロアチア戦。ロシアW杯、東京五輪で変えられなかった歴史を塗り替えられるか。森保監督が、その2大会での経験を武器に挑戦する。(選手敬称略)
(石井紘人 @ targma_fbrj)