ツイッター有料化なら運用停止も覚悟 却下され続けた「認証バッジ」思いは複雑

緊急特集「激震!ツイッター 企業公式アカウントの本音」前編

   ツイッターが「有料化」するかもしれない。イーロン・マスク氏が米ツイッター社を買収して以降、こうした報道が出ている。今のところ先行き不透明だが、サービスの利用が有償となれば、ユーザーが他SNSに流出するのは避け難い。

   仕事としてツイッターを扱う「企業公式アカウント」は、揺れるツイッターの現状をどう受け止め、今後の見通しを立てているのか。運用停止の可能性も含め、4アカウントに考えを聞いた。

ツイッター有料化すれば「企業公式アカウント運用停止」もあり得る?
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「自腹」は切れない

   3社は、公式ツイッター担当者が匿名で取材に応じた。A社、B社、C社とする。

A社:運用歴6年以上、フォロワー数約3万、2017年に認証済みバッジ取得
B社:運用歴3年以上、フォロワー数5~10万、2021年に認証済みバッジ取得
C社:運用歴10年以上、フォロワー数約6万、未認証

   アイラップ公式ツイッター担当者(以下、アイラップ)のみ、「あくまでアカウント運用者としてのひとつの考えであり、会社の総意ではない」という前提のもと、記名で回答を寄せた。2018年6月から運用を担当しており、フォロワー数は23万超、21年10月に認証済みバッジを取得した。

   まず、「全ユーザーが、金銭を支払わないとツイッターを使えない」状況になった場合、自社ツイッターはどういった運用になりそうか、質問した。アカウント存続を前提に答えたのは、アイラップ担当者とB社だ。

アイラップ「運用スタイルは再検討を迫られると思う。これまでの『中の人スタイル』ではなく、広報的アナウンスがメインになる可能性が高い」
B社「お金を払ってでもツイッターを使いたい人のために、これまで通りの運用を続けようとは思う。ただ、見る層が変わるとなると、そこに合わせた内容を検討する必要はある」

   いずれも、「従来のやり方では通用しない可能性がある」との予想で一致。アイラップ担当者の言う「中の人スタイル」とは、ツイッター担当者(中の人)が個性や人柄を出したツイートをしたり、フォロワーと交流したりと、一方通行の情報発信のみにならない形を指す。アカウントや企業への親しみを感じてもらうのが目的だ。

   一方A社とC社は、運用停止を視野に入れた回答だった。

   C社はツイッターが「フォロワーとのコミュニケーション」において有益かどうかで判断するそうだ。これまで通りの運用効果が期待できれば、有料・無料を問わず続けたいが、「そうでなければ閉じる」。そして、こう続けた。

「(運用を続ける場合)いずれにせよ、インプレッション(ツイートの表示回数)や、フォロワー数だけを追い求める運用では通用しなくなると覚悟している」

   A社は、ある程度フォロワーがいるため、「感覚的に月額1000円以内なら、『やる』方向になるのでは」と話す。ただし、

「あまりに高額なら難しい。運用のために自腹は切れないので。運用も金額次第で変化があると思われるが、そこが提示されないと、まだ何とも言えない」

偽アカウントにバッジ取られたら大変

   「認証済みバッジ(以下、バッジ)」も、維持するうえで有料になる可能性がある。バッジとは、一定の要件を満たしたうえで申請手続きを取り、ツイッター社に認証されると、アカウント名の横につく「青いチェックマーク」。以前は、アカウントが本物・公式だと保証するに等しい「お墨付き」のような存在で、なりすまし防止の役割を期待されてきた。

   ただ、ツイッターが11月10日に米国やカナダなど一部地域に提供開始した、有料の新サービス「Twitter Blue」に「バッジの提供」が含まれていたため、「バッジを持ったなりすまし」が急増。誰でも月額8ドル(約1100円)払えば、バッジ取得できるからだ。これを受け、11月11日午後(日本時間)サービスの受付は停止した。

   マスク氏は11月10日に「ツイッターは今後数か月間、バカなことをたくさんするので、ご注意を」と、試行錯誤が続くことをツイートでにおわせている。現に16日のツイートで、11月29日にはTwitter Blueを再開すると表明した。例えば今後、「バッジ取得・維持には、月額がかかるTwitter Blueへの加入必須」などの条件が改めて全世界で設けられたら、どうするのか。

   アイラップ担当者は、前提として「アカウント運用を継続する場合」、バッジを維持すると思う、と回答。偽アカウント発生時に、バッジの有無で見分けてもらえるメリットがあるためだ。ただ、誰でもバッジを金銭で取得でき、なりすましが頻発する事態になれば、再検討の余地があるとする。

   B社も、「予算の範囲内で、できる限りバッジを維持するよう調整」する。その理由は、

「たとえバッジが『月額を払った証』になろうと、現状でバッジがついているアカウントが維持しないとなると、なりすましアカウントにとって有利な状況となる可能性がある」

   ためだ。「バッジがあれば安心」と認識するユーザーがいる以上、なりすましがバッジあり、公式アカウントが無しという「ねじれ」状態になるのは避けたい。

   A社は、「バッジを持っていることで、ユーザーに信頼されている感覚はある」ものの、維持費が高額の場合は購入しないという。魅力的な機能が追加されるなど、有料化のうまみが担保されれば会社に掛け合うが、「現時点ではメリットが見出せない」ためだ。

「お金で買える」いっそスッキリ

   未認証アカウントであるC社は、迷いがある様子。

「公式・本物であることの認証(なりすましではない)であれば、申請したい。ただ、Twitter Blueのような『有料アカウントの明示』だけであればメリットが薄く、申請しない」

   バッジ取得を目指し続けた背景には、「なりすましアカウントによる、フィッシング詐欺」の横行があると語る。ユーザーへの被害や混乱を防ぐには、企業側が「公的に運用しているアカウント」だとバッジで示し、わかりやすく注意喚起できるとよい。

   また、C社は「公式アカウントなのに、何度申請しても認証されなかった」経験上、月額を払えばバッジを取得できる仕組みは、『特筆性、著名性をツイッター社に評価された・されない』という点での運用より、すっきりしていてよい」とも話す。

   企業アカウントの中には、C社のように、フォロワー数が数万規模で運用歴も長く、紛れもない公式なのに、何度申請しても認証されないケースが珍しくなかった。申請結果は「認証できなかった」しか伝えられないため、原因がわからず、改善も難しいのだ。それなら、「お金を払えば、公式の証を手に入れられる」構図はシンプルだと言える。

   現段階ではツイッター社の公式発表が少なく、4社とも判断材料が出揃うのを待っている印象だ。そうした状況で、各担当者はツイッターの未来をどう見通しているのか。後編では別のSNS運用を見据えているのかも含め、取材する。

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