国民年金の納付期間5年延長 自営業者や無職、フリーターに厳しい未来

   「国民年金の納付期間が5年延長されそう」と報じられ、波紋が広がっている。少子高齢化の進展で、現状の制度では年金財政がひっ迫し、将来の年金支給額を減らすことにならざるを得ないからだという。早ければ2025年に法改正が行われる見通し。

   自営業者やフリーター、定年退職して働かない人などへのダメージが特に大きいとみられている。

将来受け取れる年金額は、いくらに
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45年間納付

   このニュースをいち早く伝えたのは、2022年10月15日の共同通信だ。「政府は国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満の40年間から延長し・・・45年間とする検討に入った」と報じた。

   高齢者急増と、社会保障制度の支え手である現役世代の減少を受け、受給水準の低下を少しでも食い止めるため財源を補うのが狙いだという。

   国民年金は、20歳からの40年間、保険料を支払う。会社員や公務員はこれに加えて厚生年金に加入し、受け取る額も上乗せされる。

   朝日新聞によると、国民年金の保険料は現在、月1万6590円。40年間支払うと月約6万5000円の基礎年金を受け取ることが出来る。納付期間が5年延びると、国民年金だけに入る自営業者や短時間労働者、無職の人などは保険料負担が増えるが、その分、将来受け取る年金額も増加するという。

   厚生年金は原則70歳未満であれば保険料を支払うため、60歳以降も働く会社員などは今回の見直しでは、追加の負担は生じない。

   政府は25年の法改正を目指しているという。

   同紙によると、20年に年金制度を改正した際に、すでに「国民年金の加入期間を延長し、年数の上限を45年とすることについて、速やかに検討を進めること」とする国会の付帯決議が付いていた。したがって、「延長検討」は、もともと予想されていたものではあった。

支払いが約100万円増える

   このところ、この問題はテレビやラジオ、雑誌でも盛んに取り上げられている。

   日本テレビによると、国民年金の保険料は今年度の場合、年間では約20万円。これが5年分増えると、単純計算で保険料の支払いは約100万円増えるということになる。

   ヤフーの「国民年金の納付期間を64歳までに延長検討、あなたの考えは?」というアンケートには1万人以上が参加しているが、92%が「反対」している。

   経済アナリストの森永卓郎さんは10月26日、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に出演。この問題を解説している。

   森永さんの計算によると、このまま放っておくと、30年後に国民年金は、現在の月額約6万5000円から3万9000円程度に減ってしまう。さすがにこの金額で老後は暮らせない。「5万円台は死守したい」というのが政府の考えだという。そこで出てきたのが、今回の「年金納付期間の延長」だ。

   実際に延長された場合、どうなるのか。森永さんは、「民間企業の大多数が60歳で定年を迎える。大雑把に言うと、ここで人生が二手に分かれる。このまま会社でフルタイマーで働き続ける人と、軽いバイトを続けながら余生を楽しむ人。ただ、この制度になると、60歳から65歳まで毎月1万6500円程、夫婦分だと3万3000円収めなければならない。これによって生活が追い詰められてしまう」「これは、自営業やフリーランス、パートや無職の人の狙い撃ちだ」と懸念を示した。

   10月23日の「マネーポストWEB」は、納付期間が延長されても、受給額が上がるかどうかは不透明、さらに今後、支給開始年齢の引き上げや、納付開始年齢の引き下げなどもありうる、というフィナンシャルプランナーの見方を伝えている。

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