アバターが店の接客で主役になる日 ロボット「ペッパー」の運命は
「ローソン」が店内での接客に「アバター」を取り入れる。アバター事業を手掛けるAVITA(東京都品川区)と協業し、2022年11月末オープン予定の新型店舗「グリーンローソン」にアバター接客サービス「AVACOM」を導入する。
店内のディスプレーなどにアニメ調のアバターが表示。オペレーターが来店客のサポートや商品説明を行なう。無人による来店客への対応手段といえば、近年はAI(人工知能)を備えた接客ロボットが話題となった。これからは「アバター接客」がロボットに取って代わり、主流になっていくのだろうか。
ホークス「ペッパー応援団」は解散
2015年6月にソフトバンクロボティクスが発売した「Pepper(ペッパー)」。各地の家電量販店や飲食店などに導入され、目新しさが話題となった。接客ロボットの代表的存在だが、一方でペッパーの活用を終了したというケースは珍しくない。
2021年7月5日付ダイヤモンドオンラインによると、「はま寿司」では2016年から全店への導入を開始。しかし、記事時点でペッパーのレンタル契約は全店で終了済みだという。「みずほ銀行」でも2015年から店舗でペッパーを活用していたが、こちらも契約は終了済みだと同記事は報じている。
2022年に入っても、100体のペッパーで構成されるプロ野球・福岡ソフトバンクホークスの「ロボット応援団」が3月2日に解散を発表。9月1日には「あかつき」(神戸市)というレッカー会社が、「営業担当」として導入していたペッパーの契約満了を告知した。
ペッパーの普及前、調査会社「クロス・マーケティング」(東京都新宿区)は男女1200人を対象に「コミュニケーションロボット」による接客をどう感じるか調査し、結果を16年6月1日に発表した。調査によると、「全く利用したいと思わない」「あまり利用したいと思わない」との回答が全体の43.3%を占めた。
理由として「会話の微妙なニュアンスなど、人間の接客がよい・勝っている」(27.4%)、「人間より時間や手間が掛かりそう」(26.9%)など、技術面でのぎこちなさを指摘する声が多かった。
6年前のアンケートではあるが、人間による接客やコミュニケーションを重視するユーザーは一定数いると考えられる。人が遠隔で対応するアバター接客であれば、AIよりもスムーズなコミュニケーションは望めるだろう。
遠隔での接客を通して、子育て中の人や身体に障害のあるスタッフでも制約なく働けるとのメリットもある。
最近人気の接客ロボットは
ローソンに限らず、アバター接客を導入、あるいはその実験を行う企業は近年増えている。衣料品メーカーの「ワコール」は2020年10月からアバターによるリモート接客ができるシステム「パルレ」を一部店舗で採用している。
コンタクトレンズメーカー「メニコン」は、グループの販売店「Miru」にてオリジナルアバターを利用したオンライン相談サービスを導入したと22年6月に発表。一部店舗では「オンライン専用ブース」を導入している。店舗の混雑状況を気にせず、コンタクトレンズン関する相談をゆっくりと受けられるという。
導入を行う企業がこのまま増えていき、近い将来アバターによる接客が飲食店や商業施設に定着していくかもしれない。
ただ、接客ロボットが今後完全に消えるわけでもなさそうだ。飲食店ではコミュニケーションそのものではなく、配膳業務で活躍するロボットが登場している。
最近ではファミリーレストラン「ガスト」で導入が進む猫型配膳ロボット「BellaBot」が人気だ。猫を模したデザインやボイスの愛らしさが好評を得ており、ツイッター上ではたびたびその配膳風景が話題となる。
マーケティング会社「NEXER」(東京都豊島区)の市場調査サービス「日本トレンドリサーチ」は、2022年4月に「配膳ロボットに関するアンケート」の結果を公開した。全国の男女420人を対象に、今後は以前ロボットが普及してほしいと思うか聞いたところ、「普及してほしい」が22.1%、「どちらかといえば普及してほしい」が45.5%と、普及を望む声は7割近かった。
理由として、「人手不足を解消出来そう」「気を使わなくて良さそうだから」といった意見が上がった。ロボット、アバター各々のメリットを活用しつつ、人とデジタルを融合させた接客サービスが求められてきそうだ。