ゴダール監督は「安楽死」を選んだ 世界に大きな「問いかけ」を残す

   「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」などで知られる仏の映画監督、ジャンリュック・ゴダールさんが2022年9月13日、スイスの自宅で死去した。91歳、「安楽死」だった。日本では認められていないが、欧州では一部の国で合法とされている。

   ゴダールさんの死で、改めて「安楽死」が注目されることになりそうだ。

私たちが問われている「生と死」の問題とは(写真はイメージ。本文とは関係ありません)
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橋田壽賀子さん「私は安楽死で逝きたい」

   ゴダールさんは1950年代後半から、仏の新しい映画運動「ヌーベルバーグ」の旗手として、世界の映画人に多大な影響を与えた。

   読売新聞によると、体調に異常はなく、スイスで部分的に合法化されている安楽死を選んだ。遺族の声明によると、ゴダールさんは「穏やかに亡くなった」という。

   一般的に、「安楽死」は人為的に寿命を短くさせることとされている。延命治療を施さずに最期を迎える場合は「尊厳死」と言われている。

   「安楽死」への関心は近年、日本でも盛り上がりつつある。特に話題になったのは、作家の橋田壽賀子さんが書いた「私は安楽死で逝きたい」だった。2016年12月号の月刊誌「文藝春秋」に掲載されたもので、同年の「文藝春秋読者賞」(読者が選ぶ年間の最優秀賞)に選ばれ、のちに単行本化されるなど、大きな反響があった。

   さらに17年12月には、ジャーナリストの宮下洋一さんが、スイスの自殺幇助団体に登録する日本人や、「安楽死事件」で罪に問われた日本人医師を訪ねたルポ『安楽死を遂げるまで』(小学館)を発表。第40回講談社ノンフィクション賞を受賞した。

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   宮下さんは19年5月には、『安楽死を遂げた日本人』(小学館)も発表。関連してNHKは同6月、スイスで安楽死した日本人女性のドキュメンタリー「彼女は安楽死を選んだ」をNHKスペシャルで放送している。

仏では終末医療に関する国民対話集会

   産経新聞によると、欧州ではオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スペインが安楽死を合法化。スイスは自殺ほう助を容認している。

   仏は2005年、安楽死を禁じたまま尊厳死を法制化し、患者の意思を尊重して延命医療を停止できるようにしたが、「死の自決権」を求めてスイスに渡航する患者が続出。昨年の世論調査では「不治の患者の苦痛を救うため、本人の要請に基づく安楽死を認めるべき」と考える人が93%を占めた。

   ゴダールさんが亡くなった13日、仏のマクロン大統領は、終末医療に関する国民対話集会を10月から実施すると発表した。安楽死容認の是非が焦点になっており、論議の結果をもとに、来年末までに新たな法制定を目指すという。

   ゴダールさんの死を悼む評伝で、朝日新聞は14日、映画には3つ革命があったと記している。1920年代の音声、30年代の色彩、そして3つ目がヌーベルバーグだ。音声と色彩はテクノロジーが生んだものだが、ヌーベルバーグは、ゴダールさんらの天才的な創意が生み出したものだった、と強調している。

   ゴダールさんの作品は、常にセンセーションを巻き起こしてきた。今回、その死において「安楽死」を選んだことは、世界への大きな問いかけとして、また新たな論議を呼ぶことになりそうだ。

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