コロナ「無症状なら買い出しOK」の是非 厚労省調査は「感染性低い」とするが
政府による新型コロナ対応の「緩和」が進んでいる。すでに感染者の全数把握が見直される予定だが、さらに、無症状の感染者については行動規制を緩め、「買い出し」は容認する方向で検討中だと報じられている。コロナ陽性者の約2割は無症状と言われているが、これまでは自宅療養、外出自粛が求められていた。
マスクを着けたら買い物できる
朝日新聞によると、政府は無症状の患者について2022年9月半ば以降、厳密な外出自粛を求めず、マスクを着けるなどの感染対策をすれば、生活必需品を買うために外出することを許容する方向で調整に入ったという。感染対策と社会経済活動を両立させる「ウィズコロナ」に向け、政府は近く新たな政策をパッケージとして示す予定で、その一つとして検討されているそうだ。
同紙によると、政府は、無症状であればマスクを着ける、短時間にするなどの感染対策をした上で、食べ物やトイレットペーパーなど生活必需品を買うため、近くのコンビニエンスストアやスーパーに出かけることは許容する、などを検討しているという。
こうした判断に至った理由として、これまで患者の自宅には自治体が食べ物を送ってきたが、感染者が急増して遅れるケースが増えたことを挙げている。今回の措置は、自治体の物資や人員を、高齢者など重症化リスクが高い患者に集中させるためだという。
「何かしらのルールを作ってほしい」
「外出許容」という新方針に対し、日刊ゲンダイはさっそく、「また出た日本の"なし崩し"コロナ対策 『無症状者の外出容認』に科学的エビデンスは?」と疑問を投げかけた。
現状、コロナ感染者は無症状でも7日間の療養が求められ、その間は外出禁止。「無症状でも他人に感染させる恐れがあるから、これまで外出禁止だったのではないのか。オミクロン株は感染力が強力だからこそ感染爆発を招いているのに、外出を認めて大丈夫なのか」と不安を指摘する。
テレビ朝日は、買い出しについては、「無症状だったらいいのでは」と、理解を示す人も多い一方で、懸念を示す人もいると伝える。特に不安なのは、接客の矢面に立つ人たちだ。何かしらのルールを作ってほしい、というスーパー経営者の声を紹介している。
「サイレント」の「スーパー・スプレッダー」
NHKの報道によると、コロナ陽性者のうち無症状の人は約2割だという。これは、東京都の調査によるもので、21年11月から22年1月15日までの2か月半に感染が確認された5万1848人について調べたところ、検査で陽性と判明した時点で無症状だった人は1万315人にのぼる。
厚生労働省の調査報告では、無症状の人が感染させる可能性は完全には否定できないが、本人の免疫機能により、ウイルス量の増加は抑えられている。また、症状が出現していない場合は、ウイルスの排出量が少ないことが予想され、感染させる可能性は完全には否定できないものの、感染性は低いと考えられる、とされている。
しかし、無症状=感染力が弱い人、とも言い切れないようだ。世田谷区が20年10月以降、区内の約2万人の無症状者を調査したところ、78人が陽性と判明。そのうち約3割の27人は多めのウイルス保有者だったことが分かっている。
感染症の世界では、いわゆる「サイレント」の「スーパー・スプレッダー」がいることが知られている。中でも有名なのは「チフスのメアリー」と呼ばれた米国人だ。本人は全くの無症状だったが、周囲にチフスを広げたことで知られている。