かわいい、おしゃれ、は気にしない クリエイターだから「好き」を貫く

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。
未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   第4回のゲストは、山下さんと同じ東京造形大学出身の、ナカシーさん、ぱぱぬいさん。テーマは「おしゃれじゃなくてもいい!『やりたいようにやる』モノづくりのススメ」だ。スペースアーカイブはこちらから。

(左から)ぱぱぬいさん、ナカシーさん、山下さん(2017年撮影)
Read more...

今にして思えば全部、失敗だったかもしれない

   ナカシーさんは造形会社・Enku社員で、小さなフィギュアの原型を制作している。ぱぱぬいさんは、フリーランスのデザイナー・動画クリエイターだ。放課後デイサービスなどの施設で、発達障害のある児童たちにイラストの描き方や動画編集を教える仕事もしている。

   在学中は、「やりたいことに一直線な3人だった」と山下さん。当時、大学内の風潮として「カッコいい」「かわいい」とされていたものから逸れたモノづくりをしていたと、ぱぱぬいさんは振り返る。

ぱぱぬいさん「誰かが『こういうのが今、おしゃれらしい』とか『美大ではこういう流れだから』って言うことに無理して乗っかるくらいなら、自分の『好き』を貫いた方が良いよね」
ナカシーさん「実際、課題とかで試したことある。そういう(良いとされている)ものに寄せて作ってみると、実力不足の面もあると思うけど、なんかしっくりこない」
山下さん「苦手分野なのに、『みんなが作ってるから』って同じものを作ると、ろくな目に遭わない...。ただ、何事も基礎を学ぶのは大事。ここをおろそかにすると、独りよがりな産物になるし、知識はどこで役立つかわからないから」

   三者三様の「好き」を突き詰めてモノづくりに励んだ結果、どうだったか。ナカシーさんは「今にして思えば全部、失敗だったかもしれない。しょっぱいクオリティばかりで」と話す。

ナカシーさん「ただそうやって、学生時代に『0から1を作ってきた』から、今の自分があるとも思う。0から1って、全部失敗でも良いのかなって」

   社会人になり、1から2にワンステップ上がるときに初めて、「ちょっと上手くいった」経験ができ、手ごたえを得られたのがよかったそうだ。

ナカシーさん「まあ、今も8割方は失敗してるんだけど(笑)」
ぱぱぬいさん「冷静に考える時間も大事だけど、とりあえずやってみる。無理だったとしても、『できないってことがわかる』わけだから」

「この道で間違ってない」

   スペース終了後の3人に、話を振り返ってもらった。ぱぱぬいさんは、作リエを「自身の経験を『人に伝える』場」と捉え、これまでの経歴や制作物などを記憶、資料などを基に振り返ったことが大きな収穫だったという。

「制作物と同じように、自分自身もアウトプットしていく行為が、結果的に自身への肯定というか『この道で間違ってないぞ!』って再確認できる機会になったように思います」

   山下さんも「自分自身の歩んでいる道も間違いではないと思った」そうだ。いわゆる「オシャレなクリエイター」ではないが、「それぞれ『なんとか生きてますし、今の人生それなりに楽しいです』が伝わった」。特にゲストの二人が「クリエイティブの柱(制作で一番大事にしている軸)」にしていることが心に刺さり、考えを取り入れていこうと思ったという。

   ナカシーさんは、「フィギュアが好き」という気持ちが軸になっていると語った。それが揺らぐようなことがあれば、「モノづくりをやめた方がいい」。折れそうになったら無理をせずに一度折れて、修復するのがよいと考えている。どれほど好きなことでも、心身の健康には代えられないからだ。

「仕事のことでもメンタルのことでも、誰かに話す、聞いてもらうことが何よりも創作活動においてケアになると思う。頑張れなさそうなときは、人を頼る精神が重要」

   ぱぱぬいさんは「個人」と「仕事」でそれぞれに異なる軸があり、前者は「知識」で、後者は「無理しない」だ。ナカシーさんと通ずる点がある。クリエイティブは、「この世と心(精神)が安定していること」が大前提であるとして、「自分は、モノづくりに命を賭ける必要は無いと思っている。私が私として生きていく代わりは無いから」と話した。

   第5回作リエは、2022年9月7日実施予定。

注目情報

PR
追悼