「2階建て高気圧」で猛暑、「線状降水帯」で豪雨 日本の夏を襲う異常気象
今年もまた、異常気象が日本列島を襲撃している。関連して、新しい気象用語を耳にする機会も増えた。
「2階建て高気圧」で気温40度近い猛暑日になる。「線状降水帯」が居座って、途方もない量の大雨が降り続く。日本近海で発生する「発達する低気圧に関する情報」にも警戒が必要だ。
猛暑を引き起こす高気圧
「2階建て高気圧」は、日本列島を覆う「太平洋高気圧」の上に、中国大陸から張り出してきた「チベット高気圧」が乗っかっている状態を指す。高気圧が「2階建て」の状況になっているので、そう呼ばれる。
2020年8月中旬は猛暑日が続いた。静岡県浜松市では41.1度を記録した。このとき、「2階建て高気圧」という用語が、大手メディアで盛んに紹介され、注目されるようになった。
21年7月には、北海道の旭川市で35度以上の猛暑日が6日もあった。22年6月末にも、関東以西の広い範囲で早々と猛暑日が続いた。いずれも「2階建て高気圧」によるものだった。
豪雨の被害も目立っている。これは主に「線状降水帯」によるものだ。発達した積乱雲が次々と列をなし、時には同じエリアに停滞して、強い雨を降らせる。大規模な河川の氾濫や土砂崩れも引き起こし、道路や線路、橋などのインフラがマヒ。家屋の浸水や倒壊、農地の流失なども重なり、地域に甚大な被害を与える。
広島県で2014年に発生した豪雨災害のころから、しばしば使われるようになった新しい気象用語だ。
5日先までの予報を提供
台風に関しても、新たな気象情報用語を耳にする。「台風に発達する熱帯低気圧の予報」だ。
文字通り、台風になる可能性がある熱帯低気圧に関する情報だ。20年9月からは気象庁が、24時間以内に台風に発達する見込みの熱帯低気圧について、それまでの1日先から、5日先までの予報に拡充したことで、よく聞くようになった。
今回の台風8号では、まず8月10日朝10時20分、「熱帯低気圧が今後24時間以内に台風に発達する見込み」として発表された。熱帯低気圧の発生場所は、小笠原近海の北緯25度30分、東経140度20分。「1時間におよそ15キロの速さで北西へ進んでいます。中心の気圧は1008ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は15メートル」「72時間後の13日9時には伊豆諸島近海に達する見込み」というものだった。
近年、台風になりそうな熱帯性低気圧については、気象庁の気象情報の収集力や解析精度が高まり、早めに具体的な情報が公表されるようになった。
今回の熱帯性低気圧は、予報通り、近づくにつれて勢力が増大し、台風8号と名付けられた。
台風が日本近海でも多発
これらの新しい予報や気象用語の多くは、地球温暖化と無縁ではないとされている。
『人に寄り添う防災』 (集英社新書)によると、台風に関しては、温暖化の関連で2つの特異現象が起きている。
一つは、勢力の巨大化。南方の洋上で900ヘクトパスカルを切る強大な台風が頻発するようになった。気象庁は将来、中心気圧が850ヘクトパスカルを切るような史上最強の台風が登場することも予想しているという。
もう一つの特徴は、以前よりも日本の近海、高緯度で出現する台風が増えていること。温暖化の影響で日本列島近海の海水温が高くなっているためだ。1951年から2015年までの台風の平均発生緯度は北緯16度。台湾のはるか南だったが、最近は八丈島近辺(北緯33度)で発生したケースもあるという。
今回の台風8号は、北緯25度30分で誕生した。那覇市は北緯26度12分なので、緯度があまり違わない。発生から3日後には、本州に上陸した。
日本近海発生型の台風は、すぐに来襲してくるので、早めに察知し、防御策を講じる必要がある。そのため、「台風に発達する熱帯低気圧の予報」の重要性が高まっている。