「レコンキスタ」「パルチザン」 ウクライナで過去の戦争用語がよみがえる
「レコンキスタ」「パルチザン」「ジェノサイド」「レジスタンス」――ロシアのウクライナ侵攻で、世界史で習ったような歴史用語が飛び交っている。「レコンキスタ」は領土回復、「パルチザン」は主として外国による不当な侵略に対する抵抗運動のことだ。
ロシアは「ネオ・ユーラシア主義」
ロシアのプーチン大統領は2022年6月9日、「(領土を)取り戻し強化することは、われわれの責務だ」と強調し、ウクライナ侵攻を正当化した。
NHKによると。このプーチン大統領の考え方を解き明かすうえで、最近、注目を集めているのが、「ネオ・ユーラシア主義」と呼ばれる思想だ。
この思想の提唱者の一人、アレクサンドル・ドゥーギン氏は、「ユーラシア帝国の建設と反米同盟の形成」を主張。さらに、「ウクライナへの侵攻は、西側によって失わされたロシアの国土を回復するレコンキスタ(国土回復戦争)の第一歩だ」などという非常に極端な主張も展開しているという。
「レコンキスタ」とは、イスラム人に占領されたイベリア半島を、キリスト教徒が奪回しようとした戦いのこと。スペイン語で再征服の意味で、国土回復運動とも言われる。
15世紀、この戦いに勝利したスペインやポルトガルはその後、一気に新大陸獲得、世界制覇へと突き進んだ。
「レジスタンス」も活発に
「パルチザン」という用語も頻繁に目にするようになった。
テレビ朝日は6月25日、「『パルチザン』化する対ロシア抵抗活動 親ロ派ら狙い活発化」というニュースを報じた。
24日朝、ロシア軍が占領しているウクライナ南部のヘルソンで親ロシア派の幹部が車に乗り込んでいたところ爆発が発生、親ロシア派で家族・青少年・スポーツ部門責任者のサブルチェンコ氏が死亡した。
親ロシア派勢力は「テロによって殺された」と非難したが、ヘルソン州知事の顧問はウクライナ軍の指示を受けた「パルチザン」が暗殺を実行したと述べた。
パルチザンは、一般的には外国勢力の侵略に抵抗する、一般市民による非正規の軍事活動のこと。ゲリラよりも組織的な抵抗運動を指すことが多い。ナチス・ドイツの支配下に置かれた欧州各地で盛んだった。
非暴力を主とする抵抗は、「レジスタンス」と呼ばれる。第二次世界大戦中、英国に亡命していた仏ド=ゴール将軍による、対独レジスタンスの呼びかけは有名だ。
ロシアが支配下に置いたとされるウクライナ東部地区では、「レジスタンス」(抵抗運動)も活発化していると伝えられている。
遺恨は末代まで
ウクライナ北部キーウ(キエフ)州ブチャでは、民間人とみられる多数の遺体が発見された。ロシア軍による殺害だ。この事件について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ジェノサイド(特定の民族・人種をターゲットにした集団殺害)」と批判した。ベレンスキー大統領はユダヤ系ウクライナ人。祖父の世代にさかのぼると、親戚の多くがユダヤ人に対するジェノサイド=「ホロコースト」で亡くなったという。
こうした戦時用語の意味合いは、立場によって変わることもある。6月14日のヤフー知恵袋には「ロシア人の占領に対抗するウクライナ人はパルチザンと言われてますよね。でも、ユダヤ人の占領に対抗するアラブ人はテロリストと言われます。これは何故ですか?」という質問が出ていた。
イベリア半島の「レコンキスタ」は8世紀から15世紀まで約800年も続いた。現在、ゼレンスキー大統領は、ロシアによって奪われた東部地区などの「領土回復」を宣言している。いわばロシアと攻守を替えた「レコンキスタ」だ。
戦争で、「パルチザン」「レジスタンス」が登場するようになると、占領した側は抵抗運動に悩まされ、戦いが長期化することが多い。「ジェノサイド」の遺恨は末代まで受け継がれる。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってすでに4か月以上。今のところ停戦交渉が再開する兆しは見えない。