安倍元首相銃撃犯の正体を分析 「無敵の人」「ローンウルフ」「自爆テロ」

   安倍晋三元首相が2022年7月8日、遊説先の奈良市内で銃撃されて殺された。殺人容疑で奈良地検に送検されたのは41歳の男。捜査当局が犯行動機などを調べている。メディアでは「無敵の人」「ローンウルフ」「自爆テロ」などという容疑者像が報じられている。

捜査当局が犯行動機などを調べている(画像はイメージ)
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失うものがない

   「無敵の人」とは、社会的に失うものが何も無く、犯罪を起こすことに躊躇がない人を意味する。犯行後の刑罰が怖くない人たちだ。2008年ごろに実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏が使い始めた用語だという。

   スポニチアネックスによると、ひろゆき氏は8日夜放送のABEMA「Abema Prime(アベプラ)」にリモート生出演。「今回の犯人がどういう人物像かわからないんですけど。この10年の間、氷河期世代の男性で、安定した職に就いてない人のテロリスト的な事件が多いんですね」と語った。

   そして、「結局そういう人たちがなぜ出てくるのか、なぜそういう人たちを防げないのかということについて、対処した方がいいと思うんですよ。社会から疎外されているとか、敵視している人をできるだけ減らしていく方向がいい」と、持論を展開した。

事前察知が難しい

   「ローンウルフ」は、日本語では一匹狼と訳される。刑事事件関連では、単独で犯行に及ぶ犯人像を意味する。産経新聞は7月11日、「『ローンウルフ型』犯行、兆候つかめず 安倍氏銃撃」という見出しで報じている。

   記事によると、「ローンウルフ」は、テロ組織などと関わりのない個人が、インターネットなどを通じて得たテロ組織の主張などに感化され、過激化。社会に潜在化しているため、予兆がみられないことが特徴だ。

   近年、海外で多発しているが、組織との関連性がないため、警察当局が事前に行動を察知するのが難しく、犯行抑止の難しさが指摘されている。

   同紙の取材に対し、公共政策調査会の板橋功研究センター長は今回の銃撃事件について、「単独で背後関係もなく、手製の銃を使っている点などから、ローンウルフ型の犯行とみられる」と語っている。

   時事通信も9日に配信した記事で、今回の事件について、「ローンウルフ」型だと報じた。「襲撃の兆候を事前に察知する情報がなく、警備は難しかったのではないか」(民間警護会社の関係者)との見方を伝えている。

ターゲットが「特定」の人物に

   日本版ニューズウィークでは7月12日、小宮信夫・立正大学教授(犯罪学)が「自爆テロ」という視点で論じている。

   同氏によれは、捕まってもいいと思って振るう暴力が「自爆テロ型犯罪」だ。私立カリタス小学校の児童が刺殺された事件(2019年)、京都アニメーション(京アニ)が放火され社員36人が死亡した事件(同)、ハロウィーンの夜に悪のカリスマ「ジョーカー」に似せた服装をした男が京王線の乗客を襲った事件(2021年)、東京大学のキャンパス前で受験生が刃物で切りつけられた事件(2022年)などだ。

   今回の事件では、ターゲットが「特定」の人物になった。「自爆テロ型犯罪が次の段階に進んだことになる」と分析。「安倍元首相銃撃事件で指摘されている、警備態勢の不備と宗教団体への恨みは、事件のトリガーにすぎない。問題の本質は、不満の底流にある格差や貧困である」と指摘している。

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