「PS5生産大幅増」でも値上げが心配 半導体価格高騰が足引っ張らないか
「プレイステーション5」(PS5)の現状について、ソニー幹部が2022年5月26日、「部品不足は改善しつつある」と発言したという。加えて「今年は生産を大きく増やす」とも。
しかし、主要部品である半導体の供給や物量網をめぐる世界情勢は、現状安定しているとは言いがたい。今後の動向によっては、PS5が「値上げ」とならないか気になる。
ソニーグループでも商品値上げ
冒頭の発言をしたのは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のジム・ライアン社長。ソニーグループが5月26日に実施した2022年度事業説明会で説明したと、同日付の英ロイター(日本語版)が報じている。
記事では「供給網(サプライチェーン)の制約が緩和しつつある」ことを、生産拡大の根拠としている。一方で、数字を含む具体的な方策には触れられていない。
気になるのは、いまだ収まらない半導体や各種原料の不足だ。これらの価格が高騰し、製品が値上げするケースは珍しくない。
SIEと同じくソニーグループを構成する「ソニーマーケティング」は3月24日、半導体不足や原材料費・製造物流コストの高騰などを理由に、ヘッドフォンやブルーレイディスク・DVDプレーヤーといった製品の希望小売価格を4月1日から値上げすると発表。改定率は約3~31%増としている。
またアイリスオーヤマは5月13日、世界的な半導体不足や原材料・原油の高騰、円安の為替影響を理由に、消費者向け家電製品などの価格を6月1日出荷分から順次改定すると告知した。
PS5は製造コスト下回る価格設定
PS5の部品には、半導体受託製造の世界最大手・台湾TSMCの製品が使われていると、これまでの各種報道や専門家の見方から考えられる。2022年5月10日付日本経済新聞(電子版)によると、TSMCは半導体の値上げを計画中で、同記事公開時点で顧客への通知を開始しているという。TSMCは21年にも最大20%の値上げ通達を顧客に行っており、再値上げとなった。価格改定の対象は「全ての顧客」と記事は伝えている。
PS5(ディスクドライブ搭載版)の通常価格は5万4978円(税込)だが、これは製造にかかるコストとほぼ同じか下回る金額のようだ。2021年1月29日付の「日経XTECH」記事はPS5の構成部品について分析。電子部品に詳しい技術者の話として、PS5の原価は「販売価格499米ドルと同等程度ではないか」と報じた。
さらにソニーグループの2020年度第3四半期決算(2021年2月3日発表)の説明会資料によると、PS5の販売をめぐっては「ハードウエアの製造コストを下回る戦略的な価格設定による損失」が生じたという。
2021年度決算(同年5月10日発表)では、ゲーム分野で営業利益が出たことの貢献のひとつに、「製造コストを下回る価格を戦略的に設定しているプレイステーション5ハードウエアの損失縮小」を挙げている。
現状で製造コストを本体価格が下回っているとすれば、さらに部材が高騰し、吸収しきれなくなったときにどうなるか――。