PS5の売上台数をXboxが超えた? 海外発データを専門家が読み解く
「プレイステーション(PS)5」の世界での週間売上台数を、「Xbox」が上回った――こう主張する複数のデータがある。「Xbox」は、米マイクロソフト(MS)の「Xbox Series X」・「Xbox Series S」、通称「Series X|S」を指す。
2022年2月ごろから、この傾向が続いているようだ。ゲームに詳しい専門家に、読み解いてもらった。
PS5にない「強み」
「X|S」は2020年11月10日に、 PS5はその2日後に発売された。日本では影が薄い「X|S」だが、ゲーム機としての性能の高さが評価されている。また複数のゲームの進行状態を保存し、遊んでいるソフトを一度切り替えてもすぐに続きからプレーできる「Quick Resume」機能は、PS5にはない魅力だ。
世界のゲーム売り上げを集計している英サイト「VG Chartz」の売上集計データを見ると、2020年11月8日〜14日の世界のハード売上台数はPS5が約146万台で1位、「X|S」が約129万台で2位。そして11月下旬にかけて「ニンテンドースイッチ」が1位に浮上し、 PS5が2位、「X|S」が3位となった。以降、1年近くこの状況が続く。
しかし2021年11月下旬、「X|S」が一時期PS5の売り上げを追い越す。そして22年1月30日〜2月5日の週以降、4月5日まで2か月近く「X|S」の優位が続いている。3月30日〜4月5日では「X|S」は約23.3万台を売り上げ、PS5は約18.6万台だ。
なお日本に限定すると、20年11月から22年4月まで一貫してPS5の方が「X|S」よりも高い売上台数を示している。
業界団体や調査会社も「X|S」に軍配
エース経済研究所のシニアアナリスト・安田秀樹氏に取材した。ゲーム業界に詳しい。前提として、「VG Charts」の数字は必ずしも正確ではないと指摘する。
売り上げの集計方法について「VG Charts」側は声明を出していない上、ゲーム会社の決算説明や売り上げ台数の発表に合わせて、データの数字が大幅に修正されることがあるとのこと。少なくとも直近4週間の集計データはあまり「あてにならない」とした。
ただ、4週間よりも前、2月に海外市場で「X|S」がPS5よりも売れたとする情報は、ほかにも複数ある。MSやソニー・インタラクティブエンタテインメントが加盟するゲーム業界の団体「欧州インタラクティブ・ソフトウエア連盟(ISFE)」は、欧州のゲーム売上データ「Games Sales Data(GSD)」を提供している。
英ゲームメディア「gameindustry.biz」2022年3月15日付記事は、GSDの2月のデータを紹介した。英国とドイツを除く欧州10か国(フランス、イタリアなど)では、「X|S」がPS5の売り上げを上回ったという。
また米市場調査会社「NPD」のアナリスト、マット・ピスカテラ氏は22年3月11日、NPDによるゲーム市場の月間調査結果(2月分)をツイッター上で紹介した。米国ではスイッチが最も売り上げが多かったが、2番目のハードは「X|S」だったとのことだ。
部材の調達力が影響か
では「X|S」がPS5の売り上げを本当に上回っているとすると、要因は何か。安田氏によると、昨今のゲーム市場では需要よりも供給量の方が売り上げに大きく影響する。つまり「X|S」の供給量自体がPS5よりも多いのではないかと推測した。
PS5も「X|S」も、グラフィックの処理用の装置などには米国の半導体企業「AMD」が開発している最先端の半導体チップが使われている。こうしたチップについては現在、MSもソニーも大きな差はなく一定量の供給を受けていると安田氏はみている。
ただ、投資家に向けたソニー側の説明によると、特定の部品の調達が困難なためにPS5の供給は制約を受けている。
安田氏は、電源や無線通信機能「Bluetooth」を制御する装置などについては、MS・ソニー両社で異なるメーカーの半導体が使われているとみる。PS5に搭載されているこうした機器用の半導体に何らかの事情で供給難が生じ、AMD製以外の半導体における調達力の差から「X|S」の供給量の方が多くなったのかもしれないという。