コロナ「第7波」忍び寄る 「まん防」解除早々の急増は「BA.2」の疑い
「再拡大」「リバウンド」「第7波が始まったのか」――新型コロナウイルスに関して、改めて警戒を呼び掛ける報道が目立つようになっている。2022年3月21に「まん延防止等重点措置」が解除されたのもつかの間、再び感染者が増加する傾向にあるからだ。
前の週を上回る傾向
テレビ朝日によると、3月31日の全国の新型コロナウイルスの新規感染者は5万1902人。34の道府県で前の週を上回っている。
特に深刻なのは沖縄だ。31日の新規感染者は1132人。前の週を上回るのは9日連続。直近1週間の人口10万人あたりの感染者数は414人と、全国で最も高くなっている。
沖縄は最も早くオミクロン株が拡大し、最も早くピークを過ぎていた。それだけに、「感染率全国トップ」という最近の状況は「再拡大」のサインともいえる。
31日の東京の新規感染者は8226人。前の週の同じ曜日を5日ぶりに下回ったものの、高い水準が続いている。4月1日は7982人となり、前週の同じ曜日と比べて増加した。
時事通信によると、東京都は31日、新型コロナウイルスの変異株に関する都の検査で、感染力がより強いとされるオミクロン株の別系統「BA.2」の疑い例の割合が5割を超えたと発表した。
8~14日の1週間では全検体中39.6%だったのに対し、15~21日では52.3%に。主流だった「BA.1」からの置き換わりが進んでいる。
リバウンドの可能性はある
政府分科会の尾身会長は3月30日の衆院厚労委員会で、新型コロナの感染再拡大が起きているかの判断には「もう数日待つ必要がある」との考えを示した。
FNNによると、尾身氏は新型コロナの感染再拡大(リバウンド)について「起きる可能性はあると思う」指摘。理由として、
▼ワクチンの3回目接種が日本よりも進んでいる国でも感染拡大が見られること
▼全体として感染が下降傾向だったので重点措置を解除したが、まだ感染のレベルが高い所があること
▼現在主流のオミクロン株より感染力が高いとされる別系統の「BA.2」への置き換わりが起きていること
▼これから花見や歓送迎会といった恒例行事が多くなること
の4つを挙げている。
一方で、現在、感染再拡大が起きているかについては、3月下旬の3連休中は検査数が少ないことに伴い、感染の報告数も減る一方で、人々の活動が活発化し接触・感染の機会が増えている可能性があるため、数日間様子を見た上で、「持続する感染拡大」かを見極める必要があると述べている。
来月上旬には9割が置き換わる
再拡大に対し、専門家の間で改めて警戒感が高まっているのは、オミクロン株の主力が急速に「BA.2」置き換わっているからだ。3月26日の産経新聞が詳しく解説している。
国内で流行するオミクロン株は、当初は系統株「BA.1」と、その表面のスパイクタンパク質に1か所変異が入った「BA.1.1」だった。感染が広がるにつれて「BA.1.1」が主流になった。
オミクロン株の解析を行っている東京大の佐藤佳(けい)准教授(ウイルス学)によると、「BA.1.1」は「BA.1」よりやや感染力が高いが、特性はほぼ同じと考えられている。一方、「BA.2」はスパイクの塩基配列が「BA.1」と大きく異なっており、より感染性を高めているとみられる。すでにデンマークや英国では主流株が「BA.2」にほぼ置き換わり、フィリピンなどの東南アジア地域でも顕著な増加傾向にある。
佐藤准教授は「『BA.2』の割合が増えている他国で感染の再拡大が起きているように、置き換わりが進む中で人流が活発になると、日本でも感染が拡大するだろう」と指摘している。
気になるのは感染力やワクチン効果、一度オミクロンに感染した場合の免疫力だ。
東大などの研究チームの動物実験の結果によると、「BA.2」は肺組織に早く広がりやすく、「BA.1」への感染による免疫が「BA.2」には効きづらい可能性もあるという。海外では「BA.1」感染者の「BA.2」への再感染も報告されているという。
ワクチン効果に関しては、英国のデータによると、発症予防効果は、2回接種から25週以降で「BA.1」は10%、「BA.2」は18%。3回目接種だと、2~4週後で「BA.1」が69%、「BA.2」は74%に高まり、10週以降は「BA.1」が49%、「BA.2」は46%に減少するなど同様の傾向を示しているという。
国立感染症研究所のデータによると、5月初頭には国内で9割が「BA.2」に置き換わると想定されている。