iPhoneも...「1円スマホ」根絶を 楽天モバイルほか加盟の団体が提言
「iPhone 13 mini」といったスマートフォンが、家電量販店にて「一括1円」で販売されているとインターネット上でたびたび報告される。情報通信業の業界団体・テレコムサービス協会の「MVNO委員会」は、こうした販売モデルを「根絶」するべきとの政策提言を発表した。
同委員会には、楽天モバイルやNTTコミュニケーションといった企業が名を連ねる。「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言2022」として、2022年3月18日に公開した資料にまとめた。
「乗り換え」回線契約条件に
量販店でのスマホ端末の格安販売は、以前にも見られた現象だ。通信事業者との回線契約と同時に端末を購入することで、本体代金が「1円」になる、といったものだ。
総務省は、こうした「端末の大幅な値引き等により事業者が利用者を誘引するモデル」は2年をめどに事実上根絶していくとの考えを2019年に示していた。
同年10月1日には、改正された「電気通信事業法」が施行。「通信料金と端末代金の完全分離」などが盛り込まれ、回線の継続利用を条件としたスマホ購入時の利益提供(値引き)は禁止された。また回線と端末のセット販売によるスマホ代の値引きは、上限が税別2万円までとなった。
ところが「MVNO委員会」の提言によると、2022年には、最新型のスマホ端末がMNPでの回線契約を条件に店頭表示価格1円で販売されるなど、この販売モデルが「復活」している。MNPとは、携帯電話番号を維持したまま他社へ乗り換え契約できる制度のことだ。
J-CASTトレンドでも、この様子を目撃した。3月中旬に東京都内の量販店2か所を訪れると、1店の店内告知では、各通信会社の「お得情報」が掲載され、iPhone13 miniを100円未満で購入できるとの記載があった。また、「iPhone SE 64GB」を「機種代一括1円」で購入できるとの広告も貼り出されていた。
3月25日付「ITmedia ビジネスオンライン」は、量販店でiPhone 13 miniや「iPhone 12 mini」が「実質23円」「一括1円」などと表示されている事例があると紹介。記事に掲載の「都内量販店」のPOP画像には、iPhoneの他、「Pixel 5G」や「AQUOS wish」といった機種も「一括1円」で購入できるとの記載があった。
「反社」の資金源にも
22年2月18日付「日経クロステック」で、筆者の高槻芳氏はこうした大幅値引きの「カラクリ」を紹介した。同氏は都内の家電量販店で実際に他社からau(KDDI)とMNP転入で契約し、「お客様負担額1円」で「13 mini」を購入したという。
記事によると、「店頭値引き」と、キャリアへの将来的な端末返却などを前提に端末を安く購入できる「端末購入サポートプログラム」、そして回線の契約を条件とした2万2000円の割引を組み合わせたことで10万1070円(au価格)の「13 mini」の負担金が1円になったのだという。
MVNO委員会の提言によると、こうした販売方法は利用者にとって誤認を招きやすく、「通信料金と端末代金の完全分離」を目指してきた一部のMVNO(仮想移動体通信事業者)側にとっては許容できるものではない。さらに、安価に入手した最新端末を中古市場などで売却することで反社会的団体の資金源となり得ると指摘している。
「健全な競争環境を整備」する観点や、こうした販売方法がスマホ利用者間の不公平を招いていることから、「このような事態は速やかに解消されるべき」と説明。移動通信市場の現状の検証や、MNO(移動体通信事業者)に対する関連規律の強化を行うことを行政側に求めた。