「殺生石」のような伝説はなくとも 「立派な岩」それだけで飾る日本人

   国指定の名勝「殺生石」(栃木県那須町)が、割れた。「九尾の狐」伝説にまつわる史跡で、俳人・松尾芭蕉の「奥の細道」にも登場する観光スポットだけに、メディアは大きく取り上げた。

   殺生石は有名だが、日本各地には巨岩・巨石を祭る場所が少なくない。ただ中には、比較的最近発見され、特に言い伝えはないが「立派な岩石」という理由だけで飾られるケースも。

国指定の名勝「殺生石」(栃木県那須町)
Read more...

出土した球体の巨岩

   長野県茅野市のJR茅野駅前には、しめ縄が巻かれた岩が飾られている。ネットニュース「withnews」は、この岩について「工事中に現れた大きな岩 『おもしろいから』しめ縄で祀った地元民」と題した記事を、2015年9月8日付で公開している。

   奈良県山添村にある「長寿石」は、1995年に村の施設「山添村ふるさとセンター」建設のための造成工事の際に出土したもの。その大きさから、山添村のシンボルになった。山添村観光協会公式サイトでは「推定重量600t(トン)、直径7m(メートル)のみごとな球体をした大岩です」と紹介されている。

   熊本県多良木町の「千年の目覚め 平成 悠久石」は、2006年7月の豪雨で出土したものだ。この岩はきれいな球状になっている。直径が約140センチメートルあるにも関わらず、人工物ではなく、自然に形成されたものだ。多良木町のウェブサイトを見ると、お堂の中に鎮座する、まん丸の巨岩の写真が掲載されている。

   NHKラジオ2021年7月15日放送の「武内陶子のごごカフェ」で、巨石写真家の須田郡司さんがこんな発言をしている。「日本各地の神社を見ると、巨石信仰が大昔からあったことに気づきます。石や岩が持つ不動性、普遍性から信仰心が育まれてきたのではないかと考えています」。

   日本人は昔も今も、巨大な岩石に心を揺さぶられるようだ。

注目情報

PR
追悼