「広告と違う」スマホゲーム「ホームスケイプ」はロシア発 その行く末
ウクライナ侵攻を受け、世界中でロシアへの経済制裁が行われている。米アクティビジョン・ブリザードや米エピック・ゲームズといった大手ゲーム会社がロシアでの販売を停止するなど、影響はゲーム業界にも出ている。
ツイッターでは、ロシアが孤立化すると、同国のゲームも日本でプレー不可になるのでは、と不安げなユーザーがみられる。ロシアのゲームと聞いてもピンとこないかもしれないが、実は日本のインターネット上の広告にはたびたびロシア発の会社のゲームが登場している。
色合わせパズル解かされまくる
スマホゲームのアプリ内やユーチューブの広告動画でたびたび流れる「Homescapes(ホームスケイプ)」というゲーム。水漏れや火事といったトラブルを、工具を選んで解決したり、迷路のような場所に設置されたピンを動かし、ピンチに追い込まれた主人公を助ける、といった広告が知られている。
これはロシアで設立された会社「Playrix」が提供しているスマートフォン(スマホ)向けのゲームだ。実際にプレーすると、主人公がボロボロの実家をリフォームしていくというストーリー。しかし壊れた棚やベッドを新品に替えようとすると、パズルゲームが始まる。同じ色のコマを3つ以上そろえる「マッチ3ゲーム」と呼ばれるパズルだ。
「ホームスケイプ」の内容は、このパズルが大半なのだ。広告で見たようなコンテンツも遊べはするが、パズルの終了後にたまにミニゲームとして出現し、プレーできるという程度だ。
「ホームスケイプ」の広告との落差はネット掲示板やツイッターユーザーの一部で知られており、iPhone向けアプリ配信サービス「App Store」でのレビュー欄では「面白いけど広告と内容が全然違う」との指摘が多い。ただゲーム自体は高評価で、レビュー評定平均は5段階中4.4だ(2022年3月8日現在)。
「Playrix」は、庭の整備をする「Garden Scapes(ガーデンスケイプ)」やアクアリウムを作る「Fishdom(フィッシュダム)」というゲームも配信している。これらもピンなどを操作して登場人物や魚を助ける広告が展開されてきたが、実際のゲーム内容の大半はやはり「マッチ3ゲーム」のパズルだ。
ウェブメディア「電ファミニコゲーマー」の20年10月13日付記事は、英国では「誤解を招く」として、「広告基準協議会」がホームスケイプとガーデンスケイプの広告表示を禁止する判断を下したと伝えている。
ロシア・ウクライナの従業員を抱えて
そんな「Playrix」もウクライナ侵攻の影響を受けているようだ。英ロイターの20年6月6日付記事によると、同社はイゴール・バッカーマン氏とドミトリー・バッカーマン氏ら兄弟が04年にロシアのヴォログダに設立。14年にアイルランド・ダブリンに拠点を移し、業績は好調に推移している。
米経済誌・フォーブス(電子版)は22年3月5日付記事で同社の近況を紹介した。従業員約4000人のうち約3000人は今もロシアとウクライナで従事しており、両国にそれぞれ約1500人いるという。なおイゴール氏はロシアとイスラエルの市民権を有し、英ロンドンに住んでいる。
同誌のPlayrixスタッフへの取材によれば、ある従業員が社内のチャットツールで「ウクライナの同僚をどうしたら助けられるでしょうか」(J-CASTトレンド編集部訳)と投稿。このメッセージは会社によって削除され、その後業務上の連絡目的のものなどを除き、チャットツール内の一部チャンネルが閉鎖されたという。
イゴール氏は同誌取材に対し、チャンネルの閉鎖の理由として、頻繁に「従業員間での憎悪の爆発」が起きたためだとした。同誌は「Playrixとその創設者は不安定な状況にある」と評した。